【記者座談会】総合評価での賃上げ加点/大手・準大手2022年3月期第3四半期決算出そろう | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【記者座談会】総合評価での賃上げ加点/大手・準大手2022年3月期第3四半期決算出そろう

A 懸案となっていた総合評価での賃上げ加点をめぐる問題は、ひとまず決着を見たと捉えていいのかな。

B 財務、国土交通両省が実態に応じた賃上げを評価対象とする解釈通知を8日付で出した。基本給や継続雇用社員のみといった部分の賃上げも実績として認めることにした。中小企業も1人当たり額の採用を可能としている。

C 昨年末時点の通知は制度をよりシンプルにする観点から、総額での評価手法のみを明示したと聞く。その後、問い合わせや要望が相次いだため、実事例に則した多様な評価手法を示した。

D ただ、制度がいつまで継続されるのかなど、業界団体が投げ掛けた課題に対する解がすべて示されたわけではない。そもそも「加点↓賃上げ」ではなく、「賃上げ↓加点」に改めるべきという声は根強い。目標の賃上げ幅に届かなかった結果として、減点という考え方はいかがなものか。

B 自民党・公共工事品質確保に関する議員連盟(品確議連)の会長を務める根本匠衆院議員が、適切なフィードバックのために継続して意見を寄せてほしいと呼び掛けているように、現行の仕組みは完成形ではない。賃上げの重要性は論をまたないが、その実効性が伴うように不断の見直しが必要だ。

D もう1点言わせてほしい。「官民協働による好循環」と言うならば、公共投資総額もその分、増やすべきだろう。全地域に満遍なくだ。そうしなければ、遠からず賃上げの原資は尽きる。首相が言う「成長も、分配も」とはそういうことではないのか。

C 賃金という企業経営の中核に行政がコミットする難しさが表れているよね。新3K(給与、休暇、希望)の実現はまさに、「言うは易く行うは難し」ということだよ。

加点措置の決着を受け、見直された賃上げ実績の確認法などを企業に説明する地方整備局 (写真は14日の北陸地方整備局)

利益はしばらく横ばいか

A 大手・準大手ゼネコンの2022年3月期第3四半期決算が出そろった。連結で16社が減収、16社が営業減益、3社が営業損失となった。第2四半期の時点で既に見えていたが、厳しい結果となった。

B 減収は東京五輪後の需要の一服感とコロナ禍で前期、前々期に受注が減少した影響だ。当時の競争激化の影響が直接的に営業減益という形で表れたと思う。大幅な営業減益や営業損失となった企業は、特定の工事での損失計上によるもので、“一過性”であることを強調する声は多い。しかし、企業によって状況は異なるが、2、3年前の大型工事で激しい競争をした結果であり、いまも鎮静化していない。今後も受注時利益や工事途中の損失に慎重に目を配らなければ、再び大きな損失が発生しかねない。高度なバランス感覚が求められる状況に変わりはない。

C 好材料は、各社の受注が堅調なことだね。需要が底堅いという認識が広がり、ここ数年の競争度合いが緩和すれば、受注時利益が上向くのではないかな。実際に、「受注時利益は良くはなっていないが、悪化はしていない」という声は聞こえ始めている。横ばい局面に入っているのかもしれないね。

B だが、それほど楽観視もできないのではないか。需要が底堅いことが明確になれば、地方部の中型公共物件の入札に多くの企業が参加するという事例は減るかもしれないが、超大型物件での激しい受注合戦はコロナ禍や東京五輪後に始まったことではない。案件の大型化で失注すると影響が大きいという競争激化の要因に何らかの変化が起きなければ、受注時利益の低下で大きな損失が発生するリスクは消えない。現在の利益環境が横ばいでしばらく続くとみた方がいいのではないかと思う。

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