【記者座談会】技能者3%賃上げ/ウクライナ危機 | 建設通信新聞Digital

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【記者座談会】技能者3%賃上げ/ウクライナ危機

A 2月28日に開かれた国土交通省と建設業4団体との意見交換会で、2022年は「おおむね3%の建設技能者の賃上げを目指す」ことを申し合わせたね。

B 「21年でおおむね2%以上の賃金上昇を目指す」とした前年を上回る高い目標設定に、全国建設業協会や全国中小建設業協会は「中小企業には相当厳しい」「なかなか困難な面もある」と率直に実情を明かした。だが、処遇改善を通じて業界の持続性を高める上で「公共工事設計労務単価の上昇によって適正利潤を確保し、さらに単価を引き上げるという好循環を継続することが重要」との認識から賛同した。

C 10年連続となる公共工事設計労務単価の引き上げとともに、4月から積算基準の一般管理費率、低入札価格調査基準の一般管理費率が改定され、賃上げの条件は整ったとの見方があるが、建設市場に占める公共工事の割合は4割程度だ。民間工事でも利益を確保できるかどうかが、3%賃上げの行方を左右すると言える。

B 会合の中でも懸念の声は聞かれた。建設産業専門団体連合会は「民間工事には(低入札価格調査基準のような)下限がなく、ダンピング(過度な安値受注)に歯止めが掛かっていない」と危機感をあらわにした。これに対し、日本建設業連合会は元請けとして反省の弁を述べつつ、受注者側の自助努力には限界があることから、「国の力も借りながら、改善させていく必要がある」との考えを示した。

A 地方自治体発注工事でのダンピングも根強く残っているとして、全建や全中建は国による是正指導を強く求めたようだね。

C 斉藤鉄夫国交相は受発注者間の契約適正化に向け、官民の発注者を問わず、必要に応じて個別に注意喚起する意向を示した。自治体・民間案件で改善が進むことを期待したい。

国交省と日建連、全建、全中建、建専連の建設業4 団体が2月28日に開いた意見交換会。斉藤国交相は「建設業の賃金引き上げは官民の共通課題」と強調した

国内建設業への影響軽微も情勢注視

A ところでロシアがウクライナに軍事侵攻した。建設業への影響はどうだろう。

D ゼネコンでは、鹿島が「ウクライナには進出しておらず、ポーランドの現地社員の生活などへの影響もみられない」とコメントしている。ウクライナの首都キエフ市で円借款の下水処理場改修事業にかかる入札支援・施工管理業務などを担当する日本工営は、現地に駐在していた人員を侵攻前にいち早く全員帰国させたそうだ。

E 建機メーカーを見ると、ロシアに事務所を持つ日立建機は危機対処委員会を設置するなど早急に対応している。コマツのロシア現地法人も現段階で大きな影響はないという。ただロシアに対する国際社会の視線は厳しさを増しており、経済制裁が今後一段と強まる可能性は大きい。資源大国のロシアが世界経済から排除されることで、原油はもちろん資材価格に影響が出るのではないか、鋼材などの価格が高騰するのではないかという不安の声は、業界を問わずあちらこちらで聞かれる。

D 鉄鋼業界でもエネルギー資源価格の高騰がさらに加速することを最大のリスクだと懸念している。とはいえ、国内の需要や建設などに使われる製品、原料調達への影響は少ないと見ているようだ。

A 原油価格高騰などを背景に値上げを打ち出したセメントや生コン業界はどうかな。

E ロシアから原料を調達しているセメント会社もあるが、現時点では在庫や輸送ルートに影響はなさそうだ。生コン業界は民需が比較的堅調に推移してきただけに、今後の情勢次第で民間設備投資の機運が落ちてくることを心配する声もある。

A 停戦に向けた動きはあるものの予断を許さない状況が続く。今後の動向を注視しつつ、一刻も早く情勢が落ち着くことを願うばかりだ。

 
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