【記者座談会】国土強靱化基本計画の改定が大詰め/GSUCフラッグシップ拠点を東京都心に創設 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】国土強靱化基本計画の改定が大詰め/GSUCフラッグシップ拠点を東京都心に創設

◆デジタル活用など新たに位置付け

A 国土強靱化基本計画の改定に向けた議論が大詰めを迎えているね。

B 国土強靱化基本法に基づく同計画は、関係各府省が毎年国土強靱化関係予算を要求する上で基本となるもので、おおむね5年ごとに見直すことになっている。4月に次期計画の骨子が国土強靱化推進本部で了承され、5月18日の有識者会議で素案が示された。計画要旨は6月にまとめる骨太の方針に反映し、次期計画は7、8月に閣議決定する予定だ。

A 今回の改定の要点は。

C 次期計画では、国土強靱化を進める上での基本方針として、「デジタルなど新技術の活用」「地域力の発揮」の二つを新たに位置付けている。デジタル活用では、線状降水帯の予測精度向上や災害時のドローン活用、効率的な道路管理など、強靱化施策の高度化につながる取り組みを盛り込んだ。地域力の発揮では、地域防災力の向上を図る地元企業の活用支援、地域の文化財の防災対策などを定めている。

B これまでの有識者会議では、公共事業の減少に伴う地域の災害対応力の低下や、社会資本の老朽化による事故の実情について、世論の理解を深めることが重要だとする意見などが出た。また、強靱化施策を予算的裏付けの下で合理的・科学的に進めていくことや、5か年加速化対策後も継続的・安定的な取り組みが必要だとする指摘もあった。

A 指摘のあった“ポスト5か年”の動向は、建設業界の最大の関心事の一つだろう。加速化対策は3年目を迎えたが、災害が激甚化・頻発化する中、強靱な国土づくりに向けて建設業が果たすべき役割は大きい。

C 日本建設業連合会は、政府・与党に対してポスト5か年計画の法定化や予算確保に向けた要望活動に取り組んでいる。与党は今国会にも同法の改正案を提出する考えだ。今後の動向に注目したい。

自民党の茂木敏充幹事長(中央右)に要望書を手渡す日建連の宮本洋一会長。ポスト5か年計画の法定化や予算確保に向け要望

MITと連携 24年度から基本設計

A 話しは変わるけど、スタートアップ(新興企業)の育成拠点をつくる「グローバル・スタートアップ・キャンパス(GSUC)構想」の具体化が進んでいるようだね。

D 岸田文雄首相が18日に広島市での日米首脳会談の中で、バイデン大統領に対し、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)と連携して東京都心部にGSUCを創設する方針を伝え、大統領とスタートアップやイノベーション分野の協力推進で一致した。

E GSUCのフラッグシップ拠点は、東京都目黒区と渋谷区にまたがる、JR東日本と東京メトロの恵比寿駅近くにある防衛装備庁艦艇装備研究所敷地の一部に整備するようだ。中高層住居専用地域のため、拠点施設の規模は3階建て程度で、最大で延べ約4万㎡弱になるという。

F GSUC施設の建設は、政府が6月中の決定を見込む「統合イノベーション戦略2023」に盛り込むことで正式に決まる。建設地が確定すれば、GSUCの運営を担うとみられる科学技術振興機構(JST)に敷地を所管換えすることになるだろう。

A GSUCはどのような施設になるのかな。

E グローバルなイノベーションエコシステムのアジアのハブを目指している。量子やAI(人工知能)といったディープテック分野の研究機能とインキュベーション機能を兼ね備える。スタートアップ創出などを通して、社会的インパクトをグローバルに生み続けることが使命となる。

D 今後は、海外のほかの大学の誘致交渉を進める。施設の基本計画などは2023年度に策定し、24年度から基本設計に着手する。最短で28年度内の開設を目指している。

 

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