【記者座談会】斉藤国交相が静岡県を視察/「新しい資本主義実現会議」が緊急提言 | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【記者座談会】斉藤国交相が静岡県を視察/「新しい資本主義実現会議」が緊急提言

A 斉藤鉄夫国土交通相が8日、大臣就任後初めて静岡県内の2カ所を視察したね。

B 最初に富士宮市の富士教育訓練センターを訪れた。現職の国交相として太田昭宏、石井啓一の両氏に次いで3人目となる。生産年齢人口の減少に伴って、技術・技能継承の必要性が高まっているいまだからこそ、「視察先の第1号に選んだ」と話していた。喫緊の課題である担い手対策への意気込みがうかがえる。

C UAV(無人航空機)のオペレーター養成コースで教員から説明を受けた際には、大臣自ら積極的に質問していた。建設業が国民の暮らしと命を守るための基幹産業として存続していく上で、働き方改革とともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)を中核とした生産性向上の重要性が増していることの表れと言える。

D 昼食後には、7月の大雨で土石流が発生した熱海市に移動した。被災現場の逢初川の源頭部と中流部では、静岡県の難波喬司副知事を始めとする地元自治体の幹部から発災直後の惨状と今後の課題などが報告され、「国としてできる限りのことをしたい」と繰り返し応じていた。

B 斉藤国交相は、そこに居合わせた地元住民との会話が印象的だったようで、中部地方整備局の熱海緊急砂防出張所に到着するや否や職員らに対し、「引き続き地域に寄り添いながら事業を進めてほしい」と激励した。

D 国交省のトップとして、新たな土地利用規制を含む危険な盛り土を防ぐ仕組みづくりに積極的に関与する考えも示していたね。

斉藤国交相は熱海市の土石流被災現場を視察した(写真提供:中部地方整備局)

賃上げ企業を政府調達で優遇

A 話は変わるけど、本格的に動き始めた岸田政権として、首相色を出す最初の経済政策がまとまった。

E 「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)が8日にまとめた緊急提言のことだね。成長の果実を賃金の形で分配して次の成長につなげる好循環を目指している。実現に向け、科学技術立国の推進、企業のダイナミズム復活など、「デジタル田園都市国家構想」の起動、経済安全保障の4つを柱とする『成長戦略』と、「人」への投資を強化する『分配戦略』を示している。

F 政府は19日の決定を目指す経済対策に緊急提言を反映させ、2021年度補正予算案や22年度予算案、税制改正案に具体的な措置を盛り込む考えだ。

G 緊急提言は、新しい資本主義を起動するため、最優先で取り組む施策を整理し、当面の取り組みの全体像を明らかにしたと政府関係者は説明するが、中身はこれまでの政策と大きく変わったとは言えない。成長戦略のうち、再生可能エネルギーの最大限導入やデジタル化などは、前政権の独立した項目から科学技術立国の推進に寄せただけとの印象だ。

F 政府関係者は、岸田政権になったことで予算の付け方や優先する法案などのウェートは変わっていると強調するけど、一般には分かりづらいと言える。

E 建設産業界が注視する「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」への言及は、地方活性化に向けた基盤づくりへの積極的投資の1つとして、取り組みを推進すると記載しているだけだった。

G それよりも、緊急提言をまとめる最終段階で入ってきた政府調達手法の見直しが気になる。物品や役務だけでなく、公共工事も対象になり得る見通しで、賃上げをする企業から優先的に調達することは、建設産業に限らずさまざまな業界にも影響を与えるとみられる。今後検討が進む見直しの内容を注視する必要があるだろう。

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