【記者座談会】東京発電の水力発電所/新たな国土強靱化・国土形成計画 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】東京発電の水力発電所/新たな国土強靱化・国土形成計画

◆インフラにデザイン性付加して価値向上

A 東京発電が群馬県片品村に新設した水力発電所「ぐんぎん尾瀬片品発電所」と「家康公用水発電所」で、デザイン性を付加することで価値の向上を図る新しい取り組みを始めたね。

B そうなんだ。でも、デザイン性を向上させると、整備コストが増大して、採算が取れなくなるんじゃないかな。

C デザイン性の向上で地域住民からの評価が高まることからネーミングライツ(命名権)や非化石証書の価値が上がるため、整備時のコストを賄えるだけでなく、維持管理費用に還元できるようになると考えているようだ。

A 今まで、インフラは整備しても年月が経つごとに価値は下がっていくものだったけど、この取り組みでは年月が経つごとに価値が上がっていくかもしれないね。

C デザイン性の高い施設は来訪者も増えるから、地域活性化につながりそうだね。

A 両発電所ではほかに、教育や防災の観点でも地域貢献に取り組むとしている。

B 両発電所は建築家の團紀彦氏を設計者に起用したみたいだね。

C そういえば、渋谷区でも「THE TOKYO TOILET」プロジェクトで、安藤忠雄氏らが公衆トイレの設計をしていた。

A インフラや公共施設にデザイン性を付加することで価値を向上させる取り組みは今後も増えていく可能性が高い。

B そうだね。インフラの価値を向上させることができれば、将来的にはインフラの“証券化”という可能性も出てくるのではないか。そうなれば税金以外でインフラを整備するという未来も見えてくる。少し妄想が膨らみすぎかもしれないけれど、この取り組みが持続可能な社会に向けた大きな一歩になることを期待するよ。

ぐんぎん尾瀬片品発電所の完成イメージ

◆一体で推進し課題を克服

A 話題は変わるけど、政府が新たな国土強靱化基本計画と国土形成計画を閣議決定したね。

B 両計画の一体推進で、自然災害の激甚化・頻発化や人口減少といった課題を克服し、安全・安心で活力のある国土づくりを進める。新たな国土強靱化基本計画では、基本方針に防災インフラの整備・管理、ライフラインの強靱化、デジタルなど新技術の活用、官民連携強化、地域の防災力の一層強化を定めている。

C 重要な取り組みが挙げられているね。

B 新技術活用は新たな柱で、被害が発生している線状降水帯や台風、豪雨などの予測精度向上、建築や都市のDX(デジタルトランスフォーメーション)による防災まちづくり、老朽化対策などを進める。もう一つの新規方針の地域の防災力強化では、地元企業やNPOなどの防災の取り組みを積極的に支援するほか、行政と住民が地域コミュニティーの強化に向けた方策を議論できる体制を整えるそうだ。

A 新たな国土形成計画はどうだろう。

B おおむね10年後を見据え、地方に軸足を置いて、地域を支える国土づくりを目指すとし、「シームレスな拠点連結型国土」を基本構想に掲げた。重点テーマにデジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成、持続可能な産業への構造転換、グリーン国土の創造、人口減少下の国土利用・管理の4点を挙げ、各テーマの取り組みの効果的な実行に向けて、国土基盤の高質化、地域を支える人材の確保・育成を分野横断の重点テーマに設定している。

C 自然災害が激甚化していることや、人口減少といった大きな課題への対応が求められているから、両計画を一体で進め、より安全・安心で活力ある国土になればいいね。

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