【日本財団 「THE TOKYO TOILET」 プロジェクト】隈研吾氏設計の「森のコミチ」 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

公式ブログ

【日本財団 「THE TOKYO TOILET」 プロジェクト】隈研吾氏設計の「森のコミチ」

 日本財団(笹川陽平会長)が東京都渋谷区内17カ所で展開中の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトで、9カ所目となる隈研吾氏設計の鍋島松濤公園トイレが完成した。タイトルは「森のコミチ」。

 隈氏はメディア向けの内覧会で「緑豊かな松濤公園に木で森に溶けるトイレをつくったら、いままでの公衆便所のイメージが一新できるかなと思ってこの公園を選んだ。散策できる集落のような『トイレの村』をデザインした」などと述べた。

 ランダムな角度のヨシノスギのルーバーに覆われた5つのトイレで構成する。トイレは均一ではなく、子育てや身だしなみ配慮など多様なニーズに対応するさまざまな個室を分棟にした。コロナ後は、建築とともに外のスペースが非常に重要になってくる時代だとも述べた。

 日本財団常務理事の笹川順平氏は内覧会で「このトイレプロジェクトは建築までが半分、そして使い始めてから残り半分が新たなスタートになる。きれいにこのトイレを使い続けられる国民性というものを世界中にアピールしていきたい。皆さんの協力なくしてはありえないと思っている。公衆トイレは、汚い、臭い、危険との調査結果が出ている。何とかこの結果を撲滅したいと思う。モデルケースをつくって全国に広げていきたい」と語った。

 隈氏は「これからは、自然や外を感じてトータルな体験が建築だという時代が来ると思っている」と話す。山の小道のような外も楽しんでもらいたいと、このトイレのコンセプトを説明する。ルーバーは耳付きのスギ板をコンピューテーショナルにデザイン、角度をつけながら微調整して、森全体の自然のリズムに溶け込むように考えたという。トイレの中にもサクラ、メタセコイアなどの多様な樹種の端材を設置しリサイクルしている。

 5つのトイレは、子育て、身だしなみ配慮、車いすなど、「村」を構成する各トイレのプラン、備品、内装も異なる。このいろいろな個室を分棟とすることで、ポストコロナの時代にふさわしい、公園に開かれた風通しの良い、通り抜けのできる「公衆トイレの村」ができ上がったとしている。

 隈氏が公衆トイレを設計するのは2回目。その関わりをこう話す。

 「バブルがはじけた1990年、東京の仕事がほとんどキャンセルになった。失意のそんな時、高知県梼原町から公衆便所の仕事をいただいた。町長から公衆便所を設計できますかと聞かれ、得意ですと答えた。梼原町は林業の町。木を使った建物の設計が公衆便所から始まった。あれから30年、巡り合わせを感じている」



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら