【トイレのイメージ覆す】デザインと創造力で"脱4K"「THE TOKYO TOILET」プロジェクト | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

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【トイレのイメージ覆す】デザインと創造力で“脱4K”「THE TOKYO TOILET」プロジェクト

 日本財団は東京都渋谷区の協力を得て、区内17の公共トイレを「誰もが快適に使用できる公共トイレ」に再生する「THE TOKYO TOILET」プロジェクトを展開している。著名建築家など16人のクリエーターが参画し、デザイン・クリエーティブの力で4K(暗い、汚い、臭い、怖い)を払拭し、公共トイレのイメージを覆す。15日には神宮通公園トイレのデザインを手がけた建築家の安藤忠雄氏が現地を訪れ「どこの公衆トイレも困っている問題を解決できたらと考えた。トイレが公園全体を輝かせることができればと思う」と語った。既に7カ所は供用を始め、公共トイレを通じた新しい社会のあり方を発信している。

9月15日に神宮通公園トイレを訪れた安藤忠雄氏と日本財団の笹川順平常務理事(右)


 日本財団と渋谷区は、2017年10月から5年間の「ソーシャルイノベーションに関する包括連携協定」を結んでおり、社会課題の解決を図る先駆的な取り組みを手掛けてきた。

 今回のプロジェクトは、暗い、汚いなどの理由で多くの公共トイレの利用者が限られている状態にあることから、クリエーターの力を借りて、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できるトイレを設置し、新しい社会のあり方を広く提案・発信することを目的としている。

 生まれ変わる17カ所の公共トイレは渋谷区と協議し、一人ひとりが尊重されるインクルーシブな社会の実現に向けた取り組みを幅広く知ってもらうため、多くの人の目に触れる場所が選定された。設計施工は大和ハウス工業、現状調査や設置機器の提案はTOTOが協力している。

 8月には恵比寿公園トイレ、代々木深町小公園トイレ、はるのおがわコミュニティパークトイレ、恵比寿東公園トイレ、東三丁目公衆トイレ、西原一丁目公園トイレ、9月7日には神宮通公園トイレが供用開始した。21年夏までには残る10カ所が完成する予定だ。完成した7カ所のトイレ設置費用は約7億5000万円となっている。

 坂茂氏がデザインを手がけた、代々木深町小公園と、はるのおがわコミュニティパークのトイレは、中が透けて見える斬新なアイデアを取り入れた。鍵を締めると不透明になるガラスで外壁をつくることで、トイレに入る前に中がきれいかどうか、誰もいないかを確認できる。2つのトイレは同規模で同じ構造だが、色彩が異なる。

はるのおがわコミュニティパークトイレ。夜は優しい明かりで木々を照らす(撮影:永禮賢 提供:日本財団)

トイレに入って鍵をかけると不透明になる (撮影:永禮賢 提供:日本財団)


 神宮通公園トイレは「あまやどり」をコンセプトに安藤氏がデザインした。都市施設としての意味やパブリックな価値を併せ持つためのシンプルで明快な回答として、円形平面の棟から屋根庇(ひさし)が大きくせり出し、縁側をつくる造形を考え出した。

神宮通公園トイレ


 安全・安心な空間とするため、外壁は風と光を通すたて格子を採用し、利用者が円形を描く壁に沿って通り抜けられる構造になっている。

 15日に現地を訪れた安藤氏は、「話をいただいた時にとても良い話だと思い、オリンピックに向けて日本の伝統である清潔で美しい国を発信できたらと考えた。まず、清潔であるためにはコロナの問題も含めて何よりも風通しの良いトイレをつくらなきゃいかんと。格子は全部開いているので風が通る。急な雨の時には雨宿りもできる。中に入ると美しい。中がきれいだと人は汚さない。このトイレが宝石箱だとすれば使う人は宝石だと思っている」とトイレに込めた思いを語った。

 17カ所のトイレの維持管理は、日本財団、渋谷区、渋谷区観光協会が三者協定を結んで取り組む。「つくって終わり」ではなく、誰もが気持ちよく利用できるように清掃を始めとしたメンテナンスにも力を入れる。

設置するトイレとデザイン担当(敬称略)

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