八千代エンジニヤリングは、SORABOT(横浜市、奥村英樹代表)の協力を得て、オフグリッド型ドローンポートを活用した遠隔自動操作による斜面監視を実証実験した。通信環境が整っておらず、電力供給も難しい山間部の工事現場で、遠隔自動操作による斜面監視に取り組み、安全対策と情報共有の大幅な効率化に取り組んだ。
落石や崩落のリスクが伴う山間部などの施工現場では、地形変化の確認を、人による巡視やドローンで撮影した平面的な写真(オルソ画像)の目視比較に依存している。労力がかかる上に、落石の移動距離などの変化の把握が難しく、効率的な仕組みの構築が課題だった。
実証では、衛星通信機能とソーラーパネル、ポータブルバッテリーを組み合わせることで、通信・電源環境が整っていない山間部でもドローンの自動運用を可能にした。安定稼働のため、ポート内の温度を最適化するシステムや、盗難対策用の監視カメラも備える。
試験は、国土交通省北陸地方整備局能登復興事務所が管轄する能登半島輪島地区地すべり災害区域内(施工・大林組)の地すべり調査業務で実施した。
常設したドローンポートから毎日午前6時30分にドローンが自動飛行し、ポートに帰還後、オルソ画像、点群、3Dメッシュモデルを自動で生成。オルソ画像については、前日との差分をAI(人工知能)が自動で比較・解析する。成果は、午前8時の施工者の朝礼で共有し、その日の作業計画策定やリスク評価に活用した。
オルソ画像比較に加えて、地形を立体的に捉える「点群データ」の差分解析を実施することが実証の最大の特徴だ。斜面に特化したプログラムを使用して目視では見逃しやすい細かな変化や、崩落した土砂の体積も定量把握できる。
8月21日-10月3日までの実証期間中、現地で行う巡視や立ち会いの多くを遠隔で代替して、大幅な業務効率化を実現できた。実際に大きな落石を検知した際には、3Dデータで崩落箇所と規模を正確に共有し、安全対策の迅速な合意形成につなげた。
同社は今後、実証結果を基に、ワークフローの完全自動化や点群データの差分解析の自動化などに取り組み、リスク評価の精度を高める考えだ。
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