
年末から年始にかけて、中国・深圳(土偏に川)に滞在した。当初、香港を考えていたが、もはや日本よりも物価が高く、キャセイパシフィック航空だと、香港行きよりも、香港の空港でフェリーに乗り換えて、約30分の深圳に行くほうが少し安かったことも理由だった。実際、ホテルの宿泊費や物価なども、香港に比べると割安感がある。そして蛇口港から、香港やマカオに日帰りで行った。これまでは香港に泊まりながら、深圳・香港都市/建築ビエンナーレの会場に幾度か出かけていたので、逆パターンである。
よく知られているように、かつて深圳は小さな漁村だったが、1980年に経済特区に指定されたことで、急速な発展を遂げ、アジアのシリコンバレーと呼ばれるIT都市に成長した。既に無人タクシーが実用化されているが、街ではよく販売や掃除のロボットが稼働している。ホテルでは、エレベーターを使ったら、掃除ロボットが後から乗り込み、機械同士で通信し、別の階で降りていった。
また、昨年オープンしたザハ・ハディド・アーキテクツによる「深圳科学技術博物館」は、大変に充実した内容で、この都市がテクノロジーに力を入れていることがよく分かる。展示の一つに、ロボットが人間と卓球の対戦をするコーナーがあり、普通に球を打ち返し、それなりに強かったことに驚かされた。
深圳は何もかも若い。当然、ユニークな造形の高層ビル群は新しく建てられたものだ。住民の平均年齢は32.5歳であり、中国の中で最も若い。年代別の人口のグラフを確認すると、50歳以上は15%程度しかおらず、マイノリティーだった。
むろん、25年前に初めて深圳を訪れたときは、“~もどき”のデザインが多く、フォトショップ建築と揶揄(やゆ)されていたが、現在はそうではない。いずれも昨年完成した中国の事務所、MADアーキテクツが設計した「深圳湾文化広場」と、デイヴィッド・チッパーフィールドと藤本壮介による巨大商業施設「K-11」は、意欲的なプロジェクトだった。既にフォスター、OMA、フクサス、KPF、都市実践(アーバヌス)、磯崎新、槇文彦、黒川紀章、佐藤総合計画による建築が存在し、ジャン・ヌーヴェルやSANAAの計画も進行している。
特にコープヒンメル・ブラウによるダイナミックな造形の「MOCAPE」(深圳当代芸術計画館)は、展示施設としても興味深い。無料の常設は、都市のビジョンや各種のデータ、深圳の巨大模型、重要な建築プロジェクトの模型、計画や法規などを展示している。つまり、市民に対して、行政がこれまでの計画を振り返りつつ、どのような未来を描いているかを分かりやすく説明しており、こうした試みは日本の都市でも見習ってほしい。
1年半前にMOCAPEを訪れた際は、上海から巡回した磯崎新の回顧展を開催していた(水戸芸術館の「磯崎新:群島としての建築」展は、これを日本版として内容を組み替えたもの)。今回は、「可能性の建築:ザハ・ハディド・アーキテクツ」展と、なんと「空山基:光・透明・反射」展を鑑賞した。前者はまさに未来的なデザインのオンパレードであり、現在、中国各地に膨大な数のプロジェクトを抱えていることがよく分かる。深圳でも、まだ作品が増えるようだ。
そして空山は、ソニーが開発したAIBOのデザインに関わったほか、セクシーなロボットのシリーズで知られるイラストレーターである。会場では、彼の絵が立体化したようなメタリックな質感の彫刻のインスタレーションが数多く展示され、MOCAPEの正面には特大のロボットが設置されていた。またディズニーやディオールとのコラボレーションのほか、マリリン・モンローやボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」をモチーフにした絵も紹介されていた。
彼の作品は、古典的なSF映画「メトロポリス」(1927年)のアンドロイド・マリアに通じる、レトロ・フィーチャーというべきデザインである。ともあれ、磯崎、ザハ・ハディド、空山に共通するのは、未来的な感覚だろう。なお、上海から深圳に巡回した空山の展覧会は、今年の3月から東京のCREATIVE MUSEUM TOKYOでも開催される予定だ。











