【佐藤工業の挑戦】最新ICTで新たな価値を生み出す! 土木・建築の組織横断連携も | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【佐藤工業の挑戦】最新ICTで新たな価値を生み出す! 土木・建築の組織横断連携も

削孔作業の厳密なコントロールを行う施工中のトンネル現場

 「まず社内基盤を整え、2年後の本格導入に進みたい」。佐藤工業がことし1月に土木事業本部の中に発足させたICT推進部の京免継彦部長は、現場のICT(情報通信技術)活用に向けた意気込みをそう語る。ICT活用の指定工事として国土交通省東北地方整備局が発注した国道45号萩牛地区道路工事も獲得した。「ここを検証の場に定め、さまざまなチャレンジをしていきたい」と意気込む。 社内勉強会を始めたのは2015年10月のことだ。国交省のCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)試行が本格化する中、20代の技術系社員を中心に、国の動向を踏まえながらICT活用の可能性を議論してきた。翌16年には3次元スキャナーによる坑内出来形測定を取り入れた熊本県内のトンネル現場を皮切りに、三重県内のトンネル工事では施工者希望として自ら提案した形でCIM活用にもかじを切った。

保有ドローンを解説する京免氏

 推進部発足のきっかけになったのは、16年11月に落札したICT活用指定の国道45号萩牛地区道路工事だった。京免氏は「社を挙げて現場でのICT活用の可能性を探りたいと考えていた。絶好のタイミングで受注できた」と力を込める。社内では勉強会を経て、技術競争力強化プロジェクトチーム「Te-CAPS」を発足させていたこともあり、これを発展させる形でICT推進部が組織された。
 推進部は国の指定工事に対応しながら、ICTの習得や技術スキームの確立に加え、活用効果の見極めを前提とした現場での具体検証も進める。発足時に6人だった体制は、3月から8人に増強し、ICT活用の推進母体としてだけでなく、技術の独自開発も担う。建設現場の生産性を25年度までに2割向上させる国の方針が示され、「このままでは取り残されてしまうとの危機感があり、少なくとも来期(18年6月期)からは現場が率先してICTを活用するよう、早急に社内基盤を整える」(京免氏)方針だ。
 展開中の社内検証プロジェクトは指定工事も含め7件に達する。新たに3件を追加し、計10プロジェクトを軸に横断的な検証を進める。保有するドローンを使い、社員が現場に出向き、起工測量や出来形測量を行えるように操縦資格の取得も進めており、3人体制で全国の現場からの要望に応える。新入社員を含め、年代別の研修会でICT活用の意識向上も図る計画だ。
 指定工事では、トンネル手前の道路改良部区間長さ477mがICT施工の対象に設定され、3次元測量や3次元設計データの作成とともにICT土工や出来形管理などを進める。並行して同社は自主的にICT活用のさまざまなチャレンジも行う。現場では3月に起工測量を行い、4月には工事が本格的に始まる。京免氏は「ICTの活用により、生産性がどれほど上がるか、どこがボトルネックになるかも含め課題を抽出する」と意気込む。
 NATMで施工する三重県内のトンネル現場では、最新型のドリルジャンボを投入しており、削孔しながら地山の状況を把握し、最適な施工をシミュレーションできるナビゲーションシステムも導入中。これまでオペレーターの経験を元にしていた削孔作業を、データをもとに数値化している。同社は「日々の細かなデータが施工の根拠になり、生産効率の下支えになっている。ICT施工はドローンだけではない。最新ICTをいかに活用し、新たな価値を生み出すかが重要」(京免氏)と可能性を追い求める。

使い始めたAI解析機

 施工時の貴重な分析データをAI(人工知能)で解析する試みもスタートさせた。初弾の試みとしてトンネル覆工コンクリートの打音調査に適用した。打音による点検作業はさまざまな影響因子の増大により、点検結果の明確な判断を下すことが困難な場合も出てくる。AI解析を取り入れることで、統計処理の結果として人間以上の分析結果を得ることができる。
 社内では、土木と建築の両部門によるICT活用の可能性検証にも乗り出す。ICTを軸に組織横断の連携も始まろうとしている。