【外国人技術者の雇用拡大】「文化の違い知り、歩み寄る」ミャンマー出身エンジニアが活躍中! | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【外国人技術者の雇用拡大】「文化の違い知り、歩み寄る」ミャンマー出身エンジニアが活躍中!

 建設業界では、高齢化や入職者の減少などによる担い手の確保が喫緊の課題になっており、外国人技術者の雇用拡大が解決策の1つとして注目されている。先駆的な取り組みとして、福岡市に本社を置く富士ピー・エスでは、ミャンマー連邦共和国出身のエンジニアが19人、正社員として活躍している。最初に正社員として採用され、入社してから間もなく6年を迎える土木本部土木設計部のニャイン・チャン・リンさんと、九州支店工務部工事チームのティハ・ナイさんの2人に、入社の動機や将来の夢、両国の文化の違いや苦労したことなどを聞いた。

設計作業中のリンさん

 2人は、ミャンマーの大学を卒業して2013年8月に入社した。大学時代は土木、建築の両方を広く学び、国内外問わず就職先を探していた折、縁あって富士ピー・エスを知り、高倍率の採用試験を突破して入社に至った。リンさんは「ミャンマーにないPC技術を身に着けたい」、ティハさんは「日本で施工技術を学びたい」と入社した動機を語る。こうした2人の動機の違いは入社後のキャリアパスにも表れている。
 リンさんは、土木設計部門を中心に配属され、現在まで設計技術者としてキャリアを積んでいる。設計の経験だけでは気付くことができない課題を学び、今後の業務に生かすため、自身が設計業務に携わった八百僧橋(岐阜県郡上市)で施工監理を昨年経験した。「現場で信用を得て橋脚の1つを任されたことが自信につながった」と、作業所長や先輩に感謝する。同時に、「自分が設計を担当した橋の完成した実物を見た感動が忘れられない」と振り返る。
 一方、ティハさんは工事部門に配属され、九州を中心に関西や東北など全国各地の現場でさまざまな工法、施工技術を経験してきた。「ものづくりが好きで、各現場で新しい発見を楽しんでいる」という。入社3年目には社内の技術研修会に現場を代表して日本語で参加。「熊本3号石田橋上部工事」の現場における環境対策について発表し、優秀賞を受賞したことが自信とモチベーションの向上につながっている。
 2人は、外国で働く場合に最も重要なこととして「コミュニケーション」を挙げる。いまでこそ不自由なく相手と日本語で話すことができるが入社(来日)当時は言葉の壁に苦しんだ。最初は英語を介していたが日本語を覚えるために、と積極的に日本語で話しかけることを心掛けた。努力を積み重ね、コミュケーションをしっかり取ることで、表情や仕草から相手の言葉が徐々に聞き取れるようになり、自分の言いたいことも相手に伝わるようになってきた。
 ただ不安がなくなったわけではない。その1つが日本語の文章だ。リンさんは「平仮名、片仮名、漢字の使い分けや送り仮名が難しい」と実感している。文化の違いもある。ティハさんは「ミャンマーでは人の頭に触ってはいけないという文化がある。同様に日本でもしてはいけないことがあるかもしれない」と話す。このことを踏まえ、後輩へのアドバイスとして、「ミャンマーに限らず外国人労働者と受け入れ企業の双方が文化の違いを知り、歩み寄ることが大事」と異口同音に話す。同時に企業側の受け入れ体制の構築も必要不可欠だ。
 将来について、リンさんは自分が学んできた技術を生かして、富士ピー・エスの社員としてミャンマーで橋を架けたいと考えている。そのために、「学ぶべきことがたくさんあるが、設計から施工まで一貫して橋全体の建設に携わりたい」という。一方、ティハさんは国内外を問わず現場所長になることを目標にしており、「橋の大小は関係ない。自分が任された現場で全力を出して頑張りたい」と目を輝かせる。

現場で測量するティハさん

 ニャイン・チャン・リンさん マンダレー工科大卒。1991年生まれ、28歳。
 ティハ・ナイさん ヤンゴン工科大卒。1990年生まれ、28歳。

リンさん(左)と ティハさん

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