【記者座談会】都道府県・政令市24年度予算案/TSMC第1工場が開所 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】都道府県・政令市24年度予算案/TSMC第1工場が開所

◇普建費増の対応で“新たな公”の推進

A 都道府県と政令市の2024年度予算案が出そろったね。

B 一般会計は、能登半島地震の対応で災害復旧事業費が大幅増となった石川県や23年の台風7号による復旧事業が増えた和歌山、鳥取の両県などを除き、41道府県が前年度を下回った。一方で、普通建設事業費は半数を超える29都道府県が前年度を上回った。

C 毎年のように災害復旧が必要になっていることもあるけれど、やはり公共施設・社会基盤施設の老朽化に伴う維持管理・更新事業が増加していることが大きいと思う。一般会計総額は税収の増減によって左右されるけれど、必要な公共事業費は増え続けるという流れだ。施設の老朽化を考えれば、公共事業費が増大するという流れは今後、ますます強まるのではないか。

B ところが、各地方自治体の人材難は顕著で、増大する維持管理・更新事業に対応できる人員数・体制の構築が急務だ。学校職員や警視庁、東京消防庁を除いた職員数が3万9000人を超える(23年度)東京都庁ですら、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化・効率化を急いでいる。10年ほど前から懸念されてきた事態が現実のものとなっている。

C どの産業も人手不足という状況を考えれば、地方自治体だけが職員を大幅に増やすことは現実的ではない。DX化も限界がある。公共施設の包括管理やPPP/PFIなど、公共施設の維持管理や更新を民間企業が担う“新たな公”の考え方が不可欠だろう。その意味では、従前から道路の維持管理や災害対応を担ってきた地域の建設業が“新たな公”の主体になれる政策の推進に期待したい。

◇バイト時給2000円、担い手確保に厳しさ

A ところで、半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が日本初の生産拠点として熊本県菊陽町で建設していた第1工場が2月24日に開所式を迎えた。開所式はどんな様子だったかな。

TSMC第1工場の開所を祝う関係者(壇上には天野裕正鹿島社長の姿も)


D 当日は、創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏や齋藤健経済産業相、蒲島郁夫熊本県知事ら関係者が勢ぞろいした。チャン氏の「日本の半導体製造のルネサンスの始まり」という発言は心に響いた。映像や出席者の言葉から、鹿島をはじめとした工事関係者に対する称賛の声が多かったことも印象に残ったね。

E 着工から1年8カ月での完成は異例のスピードだと関係者が評していた。ピーク時には1日当たり6000人近くの建設労働者が従事したそうだ。

A TSMCといえば、高い賃金設定が話題になっている。熊本県の最低賃金は時給898円だが、TSMCはアルバイトで時給2000円近い仕事もあるそうだ。建設業にとっても人ごとではない。

D TSMCや、防衛省が鹿児島県で進めている馬毛島基地関連工事の方が労務単価が高く、設計単価に見合った額では働いてもらえないという話を九州の専門工事業団体の関係者から聞いた。

E 建設系職業訓練校である広島建設アカデミーで24年度の入校者がゼロになったという報道も記憶に新しい。九州各県で半導体人材を育成する動きがある中で、建設業の担い手確保が厳しさを増す。

D 第2工場の建設を決めたTSMCをはじめ、北海道や宮城県など全国各地で半導体関連企業の工場建設の動きがある。今は半導体バブルに湧いているが、将来を見据え、建設業の担い手確保に向けた働き方改革、環境整備を急がなければならない。

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