【記者座談会】公共工事設計労務単価/都道府県・政令市の21年度予算案 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【記者座談会】公共工事設計労務単価/都道府県・政令市の21年度予算案

A 国土交通省が新しい公共工事設計労務単価を発表したが、例年と少し様子が違うようだね。

B 平均伸び率は9年連続上昇し、平均単価は過去最高を更新と、引き続き好調なように見えるが、その実は深刻だ。2020年10月に実施した労務費調査の結果、全単価の42%が前年単価を下回った。

A 公共工事の事業量は減っておらず、帝国データバンクの調査によると20年の建設業の倒産件数は過去最少となっているのに、なぜなのか。

C 国交省は新型コロナウイルス感染症による先行きの不透明感など、一時的な市場の混乱が賃金抑制につながったとみている。

B その対応として、低下した単価を前年の単価に据え置く特別措置を講じ、上昇を維持した。全地域・職種が同額以上となり、3月以降の予定価格の下落を防いだ形だ。

A 今後の影響はどうか。

D 「労務単価は“政策的”に上げることができる」と安易に考えない方がいい。財務当局との協議の中で「新型コロナによる一時的な市場の混乱を1年間使う単価に反映できない」という整理で特別措置の実施に至った。来年度調査でも下落すれば、それはもう一時的とは言わないだろう。

C 労務単価の低下は特別措置で対応できたが、支払われた給与が減少している技能者がいるという事実は変わらない。さらなる賃金抑制が続けば、担い手の確保・育成のためにこの10年間取り組んできたことが水泡に帰すことになりかねない。

D 昨年末の防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の閣議決定によって、当面の事業量は確保された。そして、今回の特別措置で1年間の労務単価は維持できた。次はしっかりと労務費を支払う。処遇改善への道筋は、ここに尽きる。

処遇改善の推進へ労務費の適正な支払いが求められる(写真はイメージ)

◆40都道府県で普建費が減少

A 都道府県・政令市の21年度予算案が出そろった。今回は新型コロナが国内で確認されてから初めての予算編成となった。普通建設事業費への影響はどうだろう。

E 普通建設事業費が減少したのは40都道府県と多数を占め、合計で6兆2577億円と前年度比17.9%減少した。要因の一部には、災害復旧事業の進捗や、国土強靱化3か年緊急対策の終了もある。ただ、後継の5か年加速化対策を補正予算で計上する自治体が多く、総額で見れば例年並みを確保できているのではないか。例えば徳島県は、2月補正と当初を合わせた公共事業費が1006億円と、15年ぶりに1000億円を超えた。

A とはいえ、各自治体は感染症対策や飲食店などの救済措置に配分せざるを得ない上、歳入見通しは不透明だ。公共施設事業の見直しを掲げる自治体もあったのでは。

F そのとおりだ。富山県は、21年度に着工予定だった富山県武道館と高岡テクノドーム別館の整備スケジュールを見直す。PFIなどの導入を視野に、事業手法から再検討する方針だ。神奈川県も足柄上合同庁舎車庫新築工事と球技場天然芝改修工事を“不急の建設事業”として中止した。感染収束への期間が長引けば、22年度以降の予算編成にも影響を及ぼしそうだ。

E 基礎自治体の予算編成にも注目したい。東京23区や神奈川19市で予算案が出そろっているが、都道府県と同様に、建設事業費は減少傾向にある。公共施設や公立学校の改修・改築・設備工事の延期が相次いでいる。長期化すれば地域建設業への影響は必至で、予断を許さない状況が続きそうだ。



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