【記者座談会】公共工事設計労務単価/設計業務委託等技術者単価 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【記者座談会】公共工事設計労務単価/設計業務委託等技術者単価

A 国土交通省は2月22日、3月から適用する公共工事設計労務単価を発表した。全国の全職種平均金額(加重平均値)は1万9392円で、前年度からの伸び率は4.1%、単純平均値の伸び率は3.3%となった。2013年度から7年連続の上昇となる今回の改定によって、単価の公表を開始した1997年度以降で最高値を記録した。
B 労務単価の上昇は、建設投資の減少など低価格受注などを背景に、著しく下落していた技能労働者の賃金水準が回復しつつあることの証左だ。これまでのピークだった97年度の1万9121円を22年ぶりに更新した。
A 業界の反応はどうだろう。
C 日本建設業連合会を始めとする関係団体から会長コメントが相次いで発表された。いずれも7年連続の引き上げに感謝するとともに、技能労働者の処遇改善など、将来の担い手確保に向けた取り組みの加速に期待を込めている。
D 25日の理事会後の会見で日建連の山内隆司会長は、「われわれが推進する処遇改善に対する大変なエールだ」と述べ、18年9月に日建連が打ち出した「労務費見積り尊重宣言」に沿った適切な賃金支払いを積極展開する構えを見せた。
C 労務単価の引き上げは働き方改革のさらなる前進に向けた追い風となることは間違いない。災害対応や国土強靱化に向けた2度にわたる補正予算の確保も含め、改革推進のアイテムは用意されている。下請契約への適正な反映など、いかに実効性を持たせることができるか。“有効な使い方”が建設業界に突き付けられている。

いかに実効性を持たせることができるか。“有効な使い方”が建設業界に突き付けられている

伸び率上昇は働き方改革に追い風

A 一方で、土木コンサルタント業務などの積算に使う設計業務委託等技術者単価も、労務単価と同様に公表を開始した97年以降で最高値となった。全職種平均の基準日額は3万9055円。前年度と比較して3.7%の上昇となった。
B 技術者単価の伸び率は、回復傾向に転じた13年度以降、13年度が0.4%、14年度と15年度がそれぞれ4.7%、16年度が3.8%、17年度が3.1%、18年度が3.0%と継続して上昇している。伸び率が鈍化している感もあったが、ここにきて3.7%の伸びを示したことは、建設コンサルタントなど実際の給与支払いが上昇していることを意味している。上昇を続けている上に伸び率も大きくなっているということは、金額ベースでの上昇度は過去の水準からみても必然的に大きくなる。
E 建設コンサルタンツ協会を始め、建設関連業の団体や各社トップからも7年連続の引き上げとともに、過去最高値となったことを歓迎する声が上がっている。
F ただ厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、技術士の年収は医師や大学教授はもとより、高校教員や自然科学系の研究者に比べても低い。これだけ自然災害が頻発する中で、国民の生活を守る基盤整備にかかわる技術者への社会評価をもっと高める必要がある。賃金水準はその分かりやすい目安の1つであり、過去最高だからといっていいわけではない。その5割増しは必要だという声すらある。
E 膨大なインフラストックの老朽化が進む中で、その多くの維持管理を担う地方自治体は財源とともに技術者不足が深刻化している。そういった発注者支援やエリアマネジメントといった新たな業務領域をカバーしていくこともこれからの建設コンサルには求められるだけに、若い世代が希望を持てる業界としていく努力はもっと必要だ。

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