【記者座談会】公共工事設計労務単価 地方で伸び顕著 処遇改善に結びつくか | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

公式ブログ

【記者座談会】公共工事設計労務単価 地方で伸び顕著 処遇改善に結びつくか

産業の魅力をさらに高めるためには、現状維持ではなく、さらなる高みを目指す必要がある


A 国土交通省は16日、3月から適用する新たな公共工事設計労務単価を発表した。全国平均(単純平均)の伸び率は2.8%で6年連続の上昇となったけど、地域ごとの特徴的な傾向はあるのかな。
B 都道府県別にみると、熊本地震からの復旧需要が大きい熊本県の伸び率が5.5%と最も高い。当然、ブロック別でも九州・沖縄が最も高い5.2%の上昇となった。それに続くのが、北陸の3.3%、北海道・東北と中国の3.1%だ。対して、関東は2.4%、四国2.0%、中部1.7%、近畿1.2%と全国平均を下回る伸び率となっている。
C 東京や大阪といった大都市を抱える関東や近畿の伸び率が小さいのは意外だ。
B 都市部よりも地方部の伸びが目立つのは昨年も同じだった。それは近年のトレンドになっている。労務単価の上昇は、直接的に言えば、公共工事の発注者が積み上げる予定価格の上昇につながる。この引き上げ効果をいかに建設従事者の処遇改善に結び付けていくかということだろう。
A 石井啓一国土交通相も16日の会見で「改めて建設業団体に対して、適正な賃金水準の確保を要請する」としている。その業界団体の反応はどうだろう。
D 16日の発表を受けて、日本建設業連合会の山内隆司会長、全国建設業協会の近藤晴貞会長、全国中小建設業協会の豊田剛会長が相次いでコメントを出した。働き方改革の中核となる処遇改善に直接影響するだけに、6年連続の引き上げには各会長とも当然のことながら感謝の意を表明している。近藤会長は、3月1日からの前倒し適用に対し、2カ年国債やゼロ国債の予算計上と併せ、公共事業の施工の平準化を後押しする要素になると期待を込めた。そして、豊田会長は、単価の上昇基調を背景に、労働環境の改善、週休2日の定着などに会員団体・企業と一丸となって取り組む決意を改めて表明した。
E 山内会長は19日に開かれた日建連理事会後の会見で、単価上昇の恩恵が末端の技能労働者にまで届いていないのではないかという質問に対し、「末端まで行き届いていないという指摘は以前からある。それは、われわれとしても決して誇れることではない」とした上で、上昇効果がすべてに行きわたるよう、引き続き努力していく考えを示した。宮本洋一副会長・土木本部長は、全国の全職種平均値がピーク時の97.4%の水準にまで達しているものの、「若者に魅力を感じてもらうためには、さらに高い所を目指す必要がある」と強調していた。また、押味至一副会長・建築本部長は、「国土交通省が引き上げてくれれば、影響は大きい」と、民間を含めた発注者への波及効果に期待を寄せた。
B せっかく上向いている労務単価をさらに押し上げ続けるためには、技能労働者に対する適切な賃金の支払いが欠かせない。国交省幹部が団体との意見交換などで頻繁に口にする「好循環」の実現に向けて、元請けを始めとした業界全体のたゆまぬ努力が求められている。宮本副会長が言うように、産業としての魅力を向上するには、現状維持ではなく、さらなる高みを目指す必要がある。
A 日建連は1月25日に、2018年の春季労使交渉・協議で賃金引き上げに積極的に対応するよう会員企業に要請している。異例の要請には、業績好調のいまを逃せば働き方改革の機会を逸するという危機感も読み取れる。労務単価の引き上げや賃金の増加を追い風に、改革を軌道に乗せることができるかどうか。業界の力が試されている。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら