【全国平均は192人】土木学会が1橋当たりの維持人口を紹介 そこから見えてきた傾向と課題 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【全国平均は192人】土木学会が1橋当たりの維持人口を紹介 そこから見えてきた傾向と課題

 東北大大学院の久田真教授は、土木学会(家田仁会長)の「2020年度土木学会全国大会in中部オンライン」で、全国、地域別の「1つの橋を支えている人口数」を紹介した。全国平均は1橋当たり192人となるが、人口が集中する東京都を除くと173人まで低下する。また、東京都は1橋を3300人で支えており、全国平均の約17倍に達する。

 国勢調査の人口情報と、道路メンテナンス会議などで公表されている管理橋梁数に基づいて、1つの橋梁を支えている人口数を算出。このデータを踏まえて地域、自治体別の橋梁維持に関する地域格差を考察している。

 ただ、自治体が管理する橋梁の現状を把握する1つの指標とするため、国土交通省や高速道路会社などが管理する橋梁は含まれていない。また、15年の国勢調査を活用していることから、税収などが見込まれる就労年代以外の年齢層も含まれる。橋梁は橋長や供用年数、劣化具合い、有事の重要性などを考慮していない。

 都道府県と市町村が管理する橋梁数約66万橋で人口約1億2700万人を割ると、全国平均は1橋当たり192人となる。

 地区別では、人口が集中する関東(1橋当たり520人)と近畿(同227人)のほか、北海道(同219人)も全国平均を上回る。一方、それ以外の地域は全国平均を下回り、中国(同83人)と四国(同88人)は100人を切っており、関東と中国では6倍以上の較差が生じる。ブロック分けは国交省各地方整備局などの管轄に準じる。

1橋当たりの人口・地域別


 都道府県別では、東京都が1橋当たり3300人で最も多い。全国平均(同192人)から東京都を除外すると、173人まで減少する。このほか、大都市がある神奈川県は1124人、愛知県は330人、大阪府は906人に上る。

 政令市別でみると、そのほとんどが全国平均を上回っているものの、浜松市(135人)や岡山市(75人)は下回っている。大阪市(3522人)と岡山市の較差は約47倍に上る。

1橋当たりの人口・政令市別


 久田教授は土木学会の会場となった中部地方に位置する三重県の状況も紹介。同県は1橋当たり99人。名張市が2542人で最多、熊野市の8人が最少となる。新潟県についても触れ、県平均は111人で全国平均を下回る。政令市の新潟市は199人で全国平均並み。最多は小千谷市の219人で、最少は関川村の29人だった。

 これらの結果から「かなりの地域格差が生じている」との認識を示した上で、「就労人口や納税額で精査すると、その格差はさらに拡大することが推察される」と分析する。また、このデータはインフラの整備量の是非を議論するものではなく、社会資本のストック効果による便益を国民が等しく享受するための政策展開に生かすことを前提としている。

 土木学会では、自治体が望むインフラメンテナンスの高度化と実装に関する情報を発信するとともに、人材育成に力を入れる考えだ。

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