◇国土強靱化実施中期計画で素案
A 国土強靱化に向けて、2026年度から5カ年の実施中期計画の素案が示された。事業規模は20兆円強という。どう捉えたら良いだろう。
B 23年6月に国土強靱化基本法が改正され、整備計画の策定が義務化された。今回の実施中期計画はこの第1弾となる。頻発・激甚化する自然災害、老朽化したインフラなど、防災上の課題は山積みだ。恒久的な課題に対する“解”と捉えられるのではないか。
C これまでの国土強靱化計画は、その時々の内閣が閣議決定し、公共事業費を補正予算でどれだけ確保できるか綱渡りの形だった。それが法改正で法定計画に位置付けられ、財源が裏付けされることになる。
A これまでの予算確保の動きはどうだったの。
D 18年度が一つの契機となった。この年は災害が多発し、北陸地方では大雪で国道に1000台以上の車が立ち往生した。大型台風の被害も大きく、暴風で流されたタンカーが関西国際空港の連絡橋に衝突したのもこの年だ。
C 18年の地震も記憶に新しい。大阪府では倒れてきた学校のブロック塀の下敷きになり、子どもが亡くなった。北海道では複数の発電所が停止し、全域で大規模停電となる日本初の“ブラックアウト”が衝撃を与えた。当時の安倍晋三首相は、その対応として「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を閣議決定した。これが今年度を最終年度とする「5か年加速化対策」や、今回の実施中期計画の素案へと結び付く。
B ただ、3月31日に公表された南海トラフ巨大地震の新たな被害想定では、最大死者数は約30万人と12年の前回想定から2万人しか減っていない。今後30年に7割の確率で発生するといわれる首都直下地震の備えも考えると、国民の生命と財産を守るために20兆円強からの増額が望まれる。
◇改正建設業法が適正価格を後押し
A 世間では防災関係が注目されているが、「3850円」も話題になっている。さてこの価格は、何でしょう。
D 13日に開幕が迫った大阪・関西万博の会場で提供される「究極のえきそば」1杯の価格だね。ネット上では価格に対するさまざまな意見があるみたいだけど、個人的には食べてみたいな。
C これを提供するまねき食品(兵庫県姫路市)によると、神戸牛をぜいたくに使用した同社として「史上最強」「最美味」の1杯で、能登半島地震からの復興を願い、器に輪島塗も採用するなど『伝統×革新、食×アート』を具現化した商品という。この価格には相応の根拠があるということだ。
B これは価格に対する理解を得ることが、どの業界でも難しい一例と言える。建設業もこれまで仕事を請け負う形態から“請け負け”とやゆされ、価格面で苦汁を飲まされる場面もあった。ものの価値だけでなく、状況変化に応じた適正価格の理解を得ることはとかく難しい。
D とはいえ、最近はプロジェクトを円滑に進める観点から、担い手不足や資材価格高騰などへの発注者の理解も深まり、価格転嫁や契約変更に応じるケースが増えているようだ。
C その点、昨年12月に施行された改正建設業法が、適正価格の対応を今後後押しすることになるだろう。価格転嫁・工期変更の協議円滑化ルールが整備されたからだ。価格高騰などが生じる恐れがある場合、建設業者には、いわゆる“恐れ情報”を契約締結前に原則、注文者に通知することを義務付けた。これで注文者には、その協議に誠実に応じる努力義務が生じる。
D 適正価格を得るため建設業者が努力し続けることは永遠の課題と言える。そばのように“細く長く”生き抜き繁栄を続けるためにも。