【BIM未来図・大和ハウス工業⑨】次世代建築工業化の扉開く 成長への共通項目抽出 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM未来図・大和ハウス工業⑨】次世代建築工業化の扉開く 成長への共通項目抽出

 米国大手経営コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーによると、欧米ではDfMA(製造・組立を考慮した設計)とIC(工業化建築)によるデジタルコンストラクションに果敢に挑戦する建設会社が登場し、工期で50%削減、コストで20%削減を実現する事例もあるという。いわば設計から製造、施工までをつなぐモジュラー建築が大幅な生産性向上を実現している。

オートデスクとの共同ワークショップで課題整理


 大和ハウス工業も部材を標準化し、工場である程度組立て、現場での生産性向上につなげる工業化建築を追求してきた。建設デジタル推進部の大竹康宏DC推進3グループ長は「小品種大量生産の時代には対応できていたが、現在のように顧客のニーズが多様化し、標準部品とは別にカスタマイズの部品が必要になり、しかも発注ロットが減る多品種少量生産時代には、利益を見いだしにくい状況になっている。最適生産を突き詰める中で、DfMA+ICへのチャレンジを選択した」と説明する。

 これまでも企画から設計、製造、施工、管理のプロセスの中で、サプライチェーンの最適化を進めてきたが、情報を次工程に流す部分は人の手によって情報を変換して共有してきた。顧客要求が多様化してきたことで、設計変更も多い。多品種生産に対応するためには、製造ラインを増やす必要もあり、生産効率の向上を図ることは難しく、結果的にコスト増となってしまう悪循環を生む懸念もあった。

 完全BIM化を出発点に、川上から川下までをデジタルでつなぐ流れが構築できれば、すべてのプロセスを一元化されたデータでつなぎ、シームレスに管理できる。DfMA+IC戦略の立案に向けたオートデスクとの共同ワークショップがスタートしたのは2019年10月のことだ。大和ハウス工業の各部門から担当者を集約し、課題整理をしながら、データ連携やプロセス自動化に向けた各プロセスの共通項目も導き出した。

 オートデスクの田澤周平プリンシパルインプリメンテーションコンサルタントは「プロセスごとに現状の課題だけでなく、将来の目標も聞き、DfMA+ICを通じて実現すべき方向性を提示した」ことを明かす。海外の事例をみると、建設分野のデジタル化で失敗するのは建物データベースやCDE(共通データ環境)が確立していないケースが多い。完全BIM化を通して、データ共有手段としてクラウドシステム『BIM360』を基盤に、CDEの構築にも乗り出す大和ハウス工業は、着実にデジタルコンストラクションの確立の道筋をたどっている。

 大和ハウス工業建設デジタル推進部の宮内尊彰次長は「これまで手作業が多かった組立工程の改善がポイントになる。デジタルコンストラクションを実現する上でDfMA+ICの確立なしには、次のステージには行けない」と考えている。同社は設計を見直すほか、部材の組み合わせを最小化、現場作業工数を減らし、工場生産を最大限活用して品質の安定化を図ることで、大幅な生産性向上を目指す。同部の上田あきはDC戦略グループ長は「設計、施工、営業の省人化はいまのプロセスで対応できるが、当社が目指すのはデジタルベースで“次世代の建築工業化”を実現することであり、それが大きなチャレンジだ」と先を見据えている。

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