【BIM未来図・大和ハウス工業①】BIM出発点にDX戦略 デジタルコンストラクションの幕開け | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図・大和ハウス工業①】BIM出発点にDX戦略 デジタルコンストラクションの幕開け

 「向かうべき成長への道筋は見えている」。大和ハウス工業の南川陽信上席執行役員は建築事業の完全BIM化を出発点に社を挙げて取り組む生産システム改革の到達点について、しっかりと手応えをつかんでいる。設計段階への完全BIM化にめどが立ち、施工段階への導入フェーズに入るのを機に、推進体制も進化させた。その先に描くのは、現場無人化や設計自動化などにつながる「次世代の建築工業化」であり、事業全体を対象にした大がかりな「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の実現である。同社のDX戦略とは何か。成長の道筋を追った。

DX基盤の構築に向けた建設デジタル推進部の役割


 BIMを軸に置いた同社の生産システム改革は、新たなフェーズに切り替わった。推進母体のBIM推進部は発展解消し、4月から「建設デジタル推進部」として活動を始めた。2019年10月には各事業領域のデジタル改革をコントロールする「DX推進部」を発足させ、20年度を機に2つの推進部が両輪となり、DXの基盤構築へ動き出した。

 建設デジタル推進部の芳中勝清理事は「これからは各生産プロセスでデジタルデータを使いこなし、仕掛けていく」と力を込める。設計段階のBIM導入は20年度末までにほぼ100%に近づく見通し。21年度からは施工段階への本格的な導入期に入るが、DXに向かう通過点として目指すのは「デジタルコンストラクション」の確立であり、デジタルデータを軸にした製造・組立を考慮した設計(DfMA)と工業化建築(IC)の融合した新たな姿だ。

 「BIMを使うようになり、見えなかったものが見えてきた」と、設計部門や施工部門の担当者から声が上がるように、社内では生産効率や品質向上など目的を持ったBIMの活用意識が芽生えてきた。各工程の部分最適を実現しながら、それをつなげる全体最適への生産改革がそこにある。南川氏は「基礎固めは終わり、これから次のステージに一歩足を踏み出す段階にきた」と手応えを口にする。

 そもそも同社が完全BIM化に乗り出した背景には、18年10月に締結したオートデスクとのパートナーシップ契約がある。BIMソフト『Revit』の全面導入に合わせて完全BIM化のロードマップを掲げ、一気に階段を駆け上がってきた。「われわれだけでは成長できない。これからもオートデスクの力が必要だ」(南川氏)。ことし11月の契約更新を前に、両社はDXを到達点に見据え、さらなる関係強化の枠組みについて本格的な協議を始めた。

 オートデスクにとっても、事業戦略の部分にまで踏み込んだ包括的な契約は世界でも数社、日本では大和ハウス工業だけだ。包括契約の旗振り役でもあるオートデスクの稲岡俊浩エンタープライズビジネスマネージャーは「大和ハウス工業は、事業そのもののあり方を変えようとしている。ともに成長しながら、日本における建設業の未来を変えるきっかけをつくりたい」と説明する。

 両社は完全BIM化を出発点に、次世代の建設生産の姿を形づくる。芳中氏が「われわれの改革はテクノロジーの高度化に向かう」と力を込めるように、大和ハウス工業ではデジタルコンストラクションへの改革が幕を開けた。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら