【BIM未来図・大和ハウス工業⑩】デジタル化は将来のステップ 進化へパートナーシップ更新 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

B・C・I 未来図

【BIM未来図・大和ハウス工業⑩】デジタル化は将来のステップ 進化へパートナーシップ更新

 完全BIM化を出発点に社を挙げて取り組む大和ハウス工業のデジタルトランスフォーメーション(DX)はどこに向かうのか。建設デジタル推進部の芳中勝清理事は「まずはデジタルコンストラクションの実現が将来の姿に向かうステップ」と強調する。生産性向上を軸とした完全BIM化によって、社内のデジタル基盤が整えば、その手法自体がDX技術として外部に提供する「川上領域の販売戦略」につながる。工事の受注提案も、住宅の販売手法についても新たな切り口を打ち出す糸口になるからだ。

デジタルコンストラクションは設計や施工の自動化に向かう


 デジタル化に突き進む中で、ネット上の販売を主とした営業展開の扉も開ける。2017年に完全子会社化した豪州住宅メーカーのローソングループは、最新テクノロジーを用いてオンラインで顧客が選択したプランやオプションをBIMデータへ反映させ、見積作成、購買システムへ連動するシステムのブラッシュアップに取り組んでいる。「これからは建築技術とセールスの融合がキーワードになる。日本に逆輸入したい取り組みの1つ」と明かす。

 南川陽信上席執行役員は「特に5年後の設計部門の姿はいまと大きく変わるだろう」と期待を寄せる。19年11月に米国・サンフランシスコのオートデスク本社で目の当たりにした「自動設計の最先端の姿が現実味を帯びる」と考えているからだ。BIM導入を足がかりにデジタルデータが社内インフラとして整えば、顧客ニーズや建築条件などを踏まえてより最適な設計プランを導く自動化の流れが確立できる。「設計担当はよりクリエーティブな部分で仕事をするようになり、より顧客と寄り添う立ち位置に変わるはず」と続ける。

 同社の事業展開も新たなビジネス領域がより大きなウェートを占めるようになる。特に建物管理を含めたストック領域でのFM(ファシリティ・マネジメント)展開は「将来の柱になる可能性を秘めている」と力を込める。コロナ禍を背景に建設市場低迷が懸念される中、右肩上がりに推移してきた同社の業績は21年3月期に大幅な減収減益予想を余儀なくされたが、経営の軸線は現行中期経営計画で掲げる22年3月期の連結売上高4兆5500億円を通過点に、さらなる高みを目指している。「将来的には請負売上規模は大きくなるが、全体の割合では下がってくるだろう」というように、ストック領域の進展が成長戦略の1つであることは間違いない。

 芳中氏は、生産性の側面から同社の成長を、こう見通す。「設計や施工の自動化が浸透しても、より多くの仕事を生み出す力が備わり、忙しさで見ればいまと変わらない。仕事の密度がより上がり、これまで10しかできなかった仕事が倍の20、さらには3倍の30もできるようになる。そのベースになるのがデジタルコンストラクションであり、そこへの改革をスタートしたいまが将来への分岐点になる」

 動き出した同社のDX戦略を支えるオートデスクとの包括的なパートナーシップはことし11月に新たな3カ年の契約が結ばれ、進化へのステージに足を踏み入れようとしている。コロナ禍の終息を見据え、オートデスクの施設で先端技術を研究しながらグローバル人財を育成するプログラムもスタートさせる計画だ。南川氏は「次の3カ年はさらにオートデスクと密接に結びつく。そして、われわれはデジタルコンストラクションへの一歩を踏み出す」と力を込める。同社は成長への扉を開けようとしている。 (おわり・西原一仁)

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら