ダイダンは2024年10月にオンラインの建設DX説明会を開き、全社員に向けてBIMとICTの推進方針を示した。ここで25年度までにBIM対応プロジェクトを5割以上確保する数値目標も掲げ、対象案件を着実に増やすことで組織としてのBIM対応力を引き上げていくことを共有した。BIM活用に向けて今年2月にオートデスクと結んだMOU(戦略的提携)は、その流れをくんだ取り組みの一つになる。
杉浦聡理事技術本部設計統括兼設計統括部長は「設計、施工の各部門でオートデスクの『Revit』を積極的に使い、その良さを実感してもらうところから進んでいく。まずは全支店が活用できる状態に持っていくことが先決」と強調する。目線の先には、BIM確認申請への対応がある。国土交通省は26年春からBIMデータから出力した図書を建築確認申請に使うBIM図面審査をスタートし、29年春からはBIMデータ審査に乗り出す。
申請者にとってはBIMによって図面の整合性が担保されていることから審査時間が短縮されるメリットが生まれる。社を挙げてBIM導入にかじを切ったゼネコンや組織設計事務所が積極的に乗り出せば、設備工事会社側も対応せざるを得ない状況が広がる。「当社にとってもBIM普及のターゲットとして26年春を位置付けている」と明かす。
Revit活用の出発点になったのは、2年前にさかのぼる。24年1月に竣工した新潟支店建て替えプロジェクトでは設計図面をRevitモデルに変換し、オートデスクのクラウドシステム「BIM360」(現Autodesk Construction Cloud)でデータを統合管理した。「Revitを使って設計、施工段階それぞれで何ができるかを徹底して検証した初のトライアルプロジェクトでもある」と付け加える。
現場では、BIMデータと連携した墨出し、天井内設備共通架台による施工、遠隔進捗管理や部材管理などにも取り組み、クラウドを介して指摘事項チェックや関係者との情報共有を密に進めてきた。大井手太上席執行役員技術本部長は「新築プロジェクトでは設計・施工で取り組める機会は少ないだけに、自社案件としてさまざまなBIM活用を試すことができた効果は大きい。ここで抽出した課題はオートデスクとMOUを結ぶ際のベースになっている」と明かす。
自社の開発案件は新たな技術を展開する絶好の場となるだけに「今後、タイミングよく案件が出てくれば空調、衛生、電気設備の連携BIMにも取り組みたい」と考えている。設計・施工へのBIM活用については、改修プロジェクトでの積極展開も見据えている。「改修後の維持管理にもデータを活用できることから規模や工事特性を見ながらBIMの活用を推し進めていく」と明かす。
社を挙げてBIM活用にかじを切った山中康宏社長は、生産合理化の一環として取り組むオフサイト生産への展開にも「BIMデータが生命線になる」と確信している。現場以外の場所で配管などを加工するオフサイト施設は関東(川崎市)、関西(奈良県天理市)、名古屋(名古屋市)、九州(福岡県宮若市)などのエリアに設けており、現在は北陸にも計画中だ。設計段階で作成したBIMデータをオフサイト施設の部材加工へとリアルタイムにつなぐことで、より機動的に施工現場への部材搬入が実現する。「いわばBIMデータは当社にとっての情報インフラになり、現場の省力化や省人化を支える基盤になる」と手応えを口にする。