【日刊建設通信新聞社主催】第2回 BIM/CIM LIVE2020② | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【日刊建設通信新聞社主催】第2回 BIM/CIM LIVE2020②

 近畿地方整備局管内でBIM/CIMに取り組む冠山峠道路第2号トンネル工事。発注者の福井河川国道事務所は遠隔岩判定の試み、受注者の大林組は予測型CIMなどのICT活用を実践している。

近畿地方整備局福井河川国道事務所/遠隔岩判定を本格運用

   計画課事業対策官 宮腰 一也氏
   工務第二課工務係長 藤本 寛隆氏
   敦賀監督官詰所建設監督官 西村 長嗣氏


遠隔岩判定の試行について

 岩判定は近畿地方整備局のトンネル地山等級判定マニアル(試行案)に基づき、切羽面観察やハンマー打撃などによって総合的に進めている。岩質変化時や一定支保パターンが50m続いた地点で実施しており、2週間に1回のペースで実施してきた。現場は事務所から坑口まで車で片道1時間、掘削後半は切羽まで片道30分程度かかり、判定にかかる拘束時間は一回当たり3~4時間に及ぶ。

 今回試行した遠隔判定は、切羽に判定員1人が出向き、事務所に2人の判定員を配置した。切羽には判定員補助の技術者も同行し、そこから音声で状況を解説してもらい、音声と画像のデータをタブレットで受信した事務所の判定員が判定項目に沿って評価し、専用のアプリに結果を入力する流れで進めた。

 遠隔判定の利点は「移動時間の短縮」「電子データによるペーパレス化」「素早く正確な情報共有」の大きく3つ。ただ、現地で見る切羽の状況と遠隔で見る状況の捉え方が違うほか、割れ目の頻度確認などは映像だけでは判定しにくいため、現場判定員の音声解説を頼りに判定する必要もある。山間部であるため、通信環境の乱れから動画や音声の乱れも出てしまう点も今後の課題といえる。

 従来の現地立ち会いと比べた場合、移動から判定にかかる時間は1回あたり200分の短縮となり、これを月に3回行った場合、1カ月で10時間もの時間短縮効果が見込めた。敦賀監督員詰所では現在4地区の現場を担当しており、判定メンバーの調整役となる主任監督員はスケジュール調整に苦慮していたが、遠隔判定で1カ月あたり2日間の時間短縮効果があった。

 今回の試行では、遠隔岩判定の後に臨場判定も行い比較検証してきた。試行を繰り返す中で、判定の精度に大きな差はなく、有効性が確認できたことから、本格運用に向けてのめどが立ち、ことし7月以降に行う岩判定は遠隔での実施が可能となった。ただ、遠隔判定はあくまでツールであり、現場担当者にとって大切なことは現場に行くことであり、それが経験値となる。切羽における判定経験者と未経験者で評価差が生じる可能性があるため、今後は切羽における岩判定経験者の育成が強く求められる。

 

大林組/探査情報をCIMモデルに統合

   冠山峠2号トンネル工事事務所所長 玉野 達氏
   技術本部技術研究所地盤技術研究部主任 藤岡 大輔氏
   生産技術本部トンネル技術部技術第二課主任 鈴木 拓也氏


予測型CIMとして3次元モデルに統合した前方探査情報

 近畿地方整備局福井河川国道事務所発注の「冠山峠道路第2号トンネル工事」は、冠山峠道路のうち、県境に位置する冠山を貫く山岳トンネル工事として、1期工事施工後のトンネル中間部から引き継いだ延長2337mを福井県側から片押し掘削で施工している。

 掘削断面が小さく、重機と作業員との接触災害のリスクがあるほか、土被りが最大720mと大きく、地下水位も高いことから掘削中の異常な変位や突発的な高圧湧水の発生が予想された。また、豪雪地帯であるため冬季に現場へのアクセスの確保のために除雪作業を行いながら工事を進める必要もあった。

 当現場では最先端のICTの活用として、「予測型CIMの適用」「岩判定会議の遠隔臨場」「AIを活用した切羽評価システムの導入」「AIを活用した重機接触災害の根絶」の4つの取り組みを進めた。

 予測型CIMは、当社が開発した従来のCIMと前方探査情報を有効に活用する方法で、複数の探査情報をCIMの3次元モデルに統合し、わかりやすく可視化するもの。試行ではノンコア削孔検層(トンネルナビ)、坑内弾性波探査と水平コアボーリングの結果をモデル化した。各モデルを整理した帳票を作成、これをクラウド化し、関係者間で共有し、岩判定会議の遠隔臨場に活用した。

 岩判定会議は、地山条件に応じた支保構造に修正設計を行うために必要となるが、参加者のスケジュール調整や移動時間など非効率な面が多くこれを改善するため、Web会議システムを導入した。各種のICTツールを導入して現地の詳細な情報の伝達や遠隔地において円滑なコミュニケーションを可能とすることで、遠隔臨場が可能なことが証明できた。

 AIを活用した切羽評価システムは、切羽を撮影した写真を対象にトンネル工学と地質学の専門家の切羽評価知識を組み込んだAIを使い、現場技術者が地質を適切に判断できるよう支援することが狙いだ。システムをクラウド化することでモバイル端末からアクセスができる。

 AIの活用による重機接触災害の根絶では、「クアトロアイズ」という作業員接触防止システムを導入した。重機稼働中に作業員の接近を感知した場合、運転者に警報で注意を喚起し、重機を強制的に停止することができる。

 

 

 

 

 

 

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