【日刊建設通信新聞社主催】第2回 BIM/CIM LIVE2020③ | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

B・C・I 未来図

【日刊建設通信新聞社主催】第2回 BIM/CIM LIVE2020③

大日本コンサルタント/事業課題をCIM使い解決

インフラ技術研究所技術開発部ICTソリューション室
BIM/CIM推進プロジェクト主任研究員 浅野 善昭氏

 ECIは設計段階から施工者の技術力を設計内容に反映させてコスト縮減や工期短縮を図るもので、施工段階の要求を設計段階で反映できるので手戻りがなく、フロントローディングができるというのが利点の1つであり、また設計段階で数量や仕様が確定した上で工事契約できることもメリットだ。工事段階で仕様の確定が困難である場合や、最も優れた技術提案によらないと工事目的の達成が難しいといった場合の工事に対して適用されることになる。

 BIM/CIM活用について、弊社ではこれまで2件対応した実績がある。1件目は設計を受注したタイミングでのECIであり、もう1件は設計がある程度進行した段階での受注だった。結果的に設計業務とほぼ同時に技術協力業務が契約された方が、手戻りが少なくて良いのではと感じた。

 ECI方式におけるBIM/CIM活用の効果や課題について発注者や施工者も交え意見を出し合い、とりまとめた。設計者にとっては設計当初から優先交渉権者の意見を反映でき、手戻りもなくせる。またイメージ共有を図り施工計画を比較でき、判断の迅速化が図られた。課題は3次元表記基準(案)に対応したソフトウェアの整備。また管理に向けた取り組みとして属性情報として維持管理を見据えた属性シートを作成したが「誰が」「どこで」モデルを管理するかという課題も浮き彫りになった。

 施工者にとっては施工計画上の配慮事項をCIMにより容易に確認でき、イメージ共有できることは大きな利点。ただし現状では2次元図面での検討と3次元CIMでの確認という二重のプロセスになってしまう。

 発注者の側に立つと工事着手前の打ち合わせに活用できる点、設計時点で施工の干渉チェックが行われているため契約後の協議を減らすといったメリットは大きい。課題はCIMデータから鋼橋製作ソフトへのデータコンバート手法の開発、数量・工事費・工期が算出可能なシステムの開発が必要であること。管理に向けた取り組みについても維持管理作業の可否について事前確認を実施、管理者として必要な属性情報の整理が必要であると考える。

 CIM活用では要求事項(リクワイヤメント)で実施項目が決められているため、概して「CIMでできること」を実施しがちになる。そのため事業課題をCIMという手段を用いて解決するという段階には達していなかった。しかし課題発見のためのきっかけとなるツールとしての活用については大いに可能性があると思っている。


鴻池組/CIMに時間軸追加しリスク可視化

土木事業総轄本部技術本部 技術企画部ICT推進課課長 藤原 祐一郎氏

 鴻池組は2工事でECI方式に取り組んでいる。

 このうち、近畿地方整備局発注の名塩道路城山トンネル工事は、延長311mをNATMで施工するもの。技術協力業務は設計者がオリエンタルコンサルタンツで、当社は優先交渉権者として参加した。工事は城山トンネル上部を斜めに交差する旧JR隧道を閉塞してからトンネル本体を施工し、切土法面工を行う。この隧道は事前にロックボルトで補強し、エアミルクを充填することでトンネル掘削時における天端の安定性を確保する技術提案を行ったが、隧道の起点側坑口部は土被りが小さく、ロックボルト先端の現況地表面からの突出、将来的な法面切土時の露出が懸念された。

 そこで3次元モデルを作成して確認し、ロックボルトが現況地表面から露出する範囲ではボルト長を3mから2mに計画変更し、将来的に切土法面から露出する範囲はボルトの材質をGFRPボルトに変更、ほかの部分は3mとする最適な配置にできた。トンネル本体工では3次元モデルでトンネルと隧道の交差状況を詳細に把握。両者の位置関係にあわせて長尺鋼管先受け工法を3段階に変化させる経済的な補助工法の設計を行っている。

 さらに現況の国道176号、JR福知山線、関電鉄塔などが近接していることを踏まえ、各施工段階での現場状況を確認し、坑口や切土形状など各種検討にも利用できるVRモデルを作成し、関係機関との協議にも活用した。

 中国地方整備局発注の大樋橋西高架橋工事は、東西に走る国道2号と南北方向の国道180号の交差点を高架化するもの。技術協力業務では設計を大日本コンサルタントが担当し、日本ファブテック・鴻池組JVが優先交渉権者となっている。

 同業務の施工計画作成では、CIMモデルに時間軸を追加して施工ステップを表現することで重機や仮設材の配置を確認してリスクを可視化。これを施工計画に反映させた。次に設計者が作成した基本設計レベルの3DAモデルを現状での活用方法や契約図書化に向けた検討も実施した。

 さらに、関係者間での情報連携として、CTC社製の3次元モデル情報共有クラウドサービス「CIM-LINK」を導入することで、発注者・設計者・施工者でCIMモデルなどのデータ共有を図り、設計段階の協議を円滑に進めることができた。この工事は施工段階における3次元情報活用モデル事業となっており、今後もさまざまな取り組みを進めていく。


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