【日刊建設通信新聞社主催】第1回BIM/CIM LIVE2020③ | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

B・C・I 未来図

【日刊建設通信新聞社主催】第1回BIM/CIM LIVE2020③

ダッソー・システムズ都市・建設業界担当 清水卓宏氏/ツール再検討の時期到来


 働き方改革について、BIM/CIMが大きな影響力を持っていることは間違いない。道具を導入する際、かけた時間とコスト以上にメリットが出るかが評価基準の1つで、現状のBIM/CIMツールを再検討する時期が来ている。

 バーチャルツインで大きなモデルを扱うことができるかが重要だ。当社が提供するプラットフォーム(BIMレベル3)で動作する「CATIA」というCADソフトを使い、パシフィックコンサルタンツは働き方改革を進めている。

 堰堤の位置や形、捕捉土砂量などすべてパラメータ化されており、数値を入力するだけですべてのモデルを自動生成できるようになっている。CATIAの利点は2つあり、3次元で地形を確認しながら設計できることと正面図と側面図で齟齬が発生しないことだ。

 i-Constructionでの測量・土工事のICT施工プロセスでは改善できる点まだがいくつかある。BIM/CIMモデルの効率化は、パラメトリックなモデルとその再利用で、効率化が可能だ。切土・盛土の算出後、広範囲な工事計画策定にはソフトの支援が必要だ。ICT建機への作業指示・施工の後、建機から返ってきたログ情報は現実とバーチャルのデータが統一された環境で維持されなければならず、建機メーカーの新たな価値提供だろう。

 i-Conの2番目のテーマがコンクリート構造物の構築の効率化だ。プレキャストコンクリートを使った施工現場では重機のスケジューリングがキーファクターとなる。

 BIM/CIMが働き方改革の重要なツールである。ラージモデルが扱えるバーチャルツインモデル、パラメトリックによる自動化とその再利用、バーチャルと現実のモデルを融合した施工シミュレーションの環境であることが重要となる。

安藤ハザマ建設本部土木技術統括部技術第二部地盤グループ主任 木付拓磨氏
/3次元で工事進捗を直観理解


 建設現場における映像を用いた工事進捗把握にはまだ多くの課題がある。われわれはこの解決に向け、「4K定点カメラ映像による工事進捗管理システム」を開発し、国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」で開発し、防潮堤の盛土工事で試行した。

 このシステムは認証されたユーザであれば、インターネット上でブラウザを介してどこからでも利用可能である。当社と異業種4者(日本マルチメディア・イクイップメント、富士ソフト、計測ネットサービス、宮城大学の蒔苗耕司教授)でコンソーシアムを結成して開発にあたった。

 試行現場は岩手県が発注し、当社JVが施工中の大槌川水門土木工事。東日本大震災の津波で被災した水門と防潮堤の復旧・新設工事で、このうち大槌川・小槌川水門間の防潮堤盛土を試行対象とした。

 防潮堤は延長300mで盛土量は約14万m3。定点カメラは防潮堤現場両端となる大槌川水門と小槌川水門の上部に2台ずつ設置。このカメラの映像はルーターを通してクラウド上にあるシステムに中継され、工事中に得られる盛土の転圧管理でのGNSSデータや深層混合処理の施工データも無線でクラウドに集約される。

 システムには4つの特徴的な機能を実装しており、まず「3Dデータの重畳表示」では工事の進捗状況を直観的に理解できるほか、盛土の品質確認も行うことができる。

 「映像からの距離や面積の算出」では、パソコン画面上を直接タッチして任意地点間の距離や面積を瞬時に算出できるため、簡易的な測量が画面上で可能となる。

 「建機検出AIによる進捗レポート」ではダンプ、バックホウ、ブルドーザ、振動ローラの4機種を識別し、ダンプの滞留など通常時とは異なる傾向を早期に把握できる。今回、カメラからの距離が150mまでなら80%程度の識別率を確保できた。

映像進捗管理システム画面

 「オルソ画像の作成」では、1日1回、4台のカメラ映像をもとに上空から俯瞰した画像を作成しており、これにより現場状況の進捗確認や施工計画の立案に活用した。

 試行を通じて工事進捗状況の共有、現場に出向く回数や滞在時間の削減、進捗管理の効率化、測量作業時間の大幅な削減という効果が得られた。国土交通省の「データ活用による建設現場の生産性向上ワーキンググループ」からは最高のAランク評価を受け、委員からは「導入効果は大きく、時間を経ずして一般化・汎用化を期待できる」などのコメントをもらっている。

 
 

 

 

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