【日刊建設通信新聞社主催】第4回 BIM/CIM LIVE2020② | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

B・C・I 未来図

【日刊建設通信新聞社主催】第4回 BIM/CIM LIVE2020②

国土交通省/受発注者のデータ一元的に集約/大臣官房技術調査課建設システム係長 諸橋亜美氏


 国土交通省では、調査・計画・設計段階から施工、維持管理の建設生産管理システムの各段階において、3次元モデルを連携・発展させあわせて事業全体に携わる関係者間で情報を共有することで、生産性向上とともに品質確保・向上を目的にBIM/CIMの普及・拡大を進めており、2023年度までに小規模を除く全ての公共工事においてBIM/CIM活用へ転換することを目指す。BIM/CIM等のさらなる活用に向け、19年3月にi-Constructionモデル事務所とサポート事務所を設置、3次元データの活用やICTなどの新技術の導入を進めている。

 BIM/CIMの活用実績は年々着実に増加しており、20年度9月末時点で、実施予定も含めると19年度実績の361件(業務254件、107件)を上回る見通しである。
 原則適用を見据え、基準要領などを改定する必要がある。20年度は、BIM/CIMモデルを作成するという視点から、事業の各段階において効果的にBIM/CIMを活用するという視点でBIM/CIM活用ガイドライン(案)の改定を行い、詳細設計業務における3次元モデル成果物の作成方法及び要件を示すため3次元モデル成果物作成要領の策定を行う。

 BIM/CIMの活用拡大に向け、受発注者の人材育成についてもさらに積極的に取り組んでいく。20年度はBIM/CIM教育要領(案)を改定し、研修プログラムやテキストを作成する。また、4つの地方整備局に人材育成センターを設定し、モデル事務所とも連携した枠組みとし、ARやVRなどのツールも活用していく。

 18年度から取り組んできた、発注者を対象としたBIM/CIM研修では概論や基準等の講義だけでなく、ソフトウェアを使ったハンズオンの実務研修を行っている。

 研修後のアンケートでは9割の受講者が有意義だったと回答をしている。特に積算作業の効果化への期待の声が多く寄せられ、発注者自ら3次元のツールを活用したいという意欲が見られた。

 受発注者のBIM/CIMを活用する環境の整備に向けて、国総研が主体となり、クラウド上で3次元モデルの作成や共有を行い、データを一元的に集約するシステムの開発を進めている。順次、モデルを編集・更新できるような機能強化を行い、ソフトを持たない民間企業でもBIM/CIMを活用できるようにしたい。

 19年度からはBIM/CIMポータルサイトを公開しており、基準要領や業界団体が公表した情報などを集約し、公開している。今後はガイドラインの更新に合わせて設計、施工の各段階での活用事例も積極的に公開していく。


JACIC 理事 尾澤卓思氏/デジタルツインが建設業の新現場力


 JACICクラウドは3つのタイプのプラットフォームで構成されている。発注および契約からオンライン電子納品までの業務管理向けの「公共調達基盤」と、河川・ダム・砂防・道路におけるプロジェクト管理や維持管理、災害時対応や成果品の利活用向けの「建設プロセス基盤」があり、これら2つのプラットフォームについては先のセミナーで解説した通りである。

 3つめのプラットフォームに、地震・津波・風水害への対応など社会資本整備向けの「社会情報基盤」がある。国土交通省のインフラデータプラットフォームなど、主にオープンな社会インフラのデータに関するプラットフォームのほか、住宅台帳などの2次元データから3次元の建物を自動的に起こし、まち全体を再現してさまざまなシミュレーションを行う「まちまるごとシミュレーション」の情報共有基盤などが考えられる。

 JACICクラウドの基本的な考え方には、サイバー空間上の会議室機能や情報のハブ機能、現場把握確認機能といった「ルーム関連」、モデルやデータの集約、属性情報の活用を行う「3次元管内図」、プロセスごとに対象となるデータの収集や管理の手順、ルールやガバナンスを示した「規定・手順書」の3つのツールをセットで提供し、現場に寄り添うことが大事だと考えている。

 ICT導入による生産性の向上を図るため、これらのプラットフォームやサービスを活用し、さまざまな関係者間でいつでもどこでも多種多様な情報の共有や利活用を即時、同時、効率的、効果的に行えるようにすることがJACICクラウドの真の目的である。

 デジタルツインとは、AI技術やシミュレーション、VR技術等を用いて、サイバー空間(仮想実態)にフィジカル空間(実物)の環境を再現し、予測や検証を通じてオペレーションやマネジメントに役立てる技術である。建設業においては、例えばダム建設事業でサイバー空間上に統合CIMモデルやデータを用いて成果品の確認や評価を行い、そこから改善点を検討してフィジカル空間へと結果を反映させることで、業務や工事だけでなく維持管理まで効率化や高度化を図ることができるようになる。

 さらに、サイバー空間にダムの将来像を直接的に確認することも可能で、発注者間の情報共有に役立てたり、QRコードからスマートフォンを使って一般住民との共通認識の形成にも有効な手段となる。

 クラウド技術やデジタルツインが建設業の新現場力となる時代が来ているのである。




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