【"街全体の美術館化"を】JR灘駅前広場(南北)概略設計 E-DESIGNが提案に込めた思いとは | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【”街全体の美術館化”を】JR灘駅前広場(南北)概略設計 E-DESIGNが提案に込めた思いとは

 神戸市は「JR灘駅前広場(南北)概略設計業務」の公募型プロポーザルを実施した結果、E-DESIGN・畑友洋建築設計事務所・モビリティデザイン工房JVを特定した。E-DESIGNの長濱伸貴代表取締役は「単なる広場のリニューアルではなく、都市空間構造を変え、まちのコアを作りたい」と提案に込めた思いを語る。

長濱氏


 同社はともに代表取締役の忽那裕樹氏と長濱氏が創設したランドスケープデザイン事務所で、「修景的な面だけではなく、場所の使いこなし方も考える」ことを理念とし、近年はエリアマネジメントなど完成後のまちの運営、デザインの前段階となるワークショップなど活躍する領域を広げている。

 長濱氏は神戸芸術工科大学の教授も勤めており、同社はこれまでにも神戸市の案件は複数手掛けている。今回のプロポーザルについては、市が打ち出した「リノベーション神戸-駅前空間の魅力創造-」の第1弾であること、灘駅は駅舎を挟んで駅前広場が北側と南側に分かれているが、これを同時にリニューアルする計画のため「まちを変えられる可能性があることに大きな魅力を感じた」と参加を決めた理由を振り返る。

 同社は「大企業の組織力を超え得る可能性がある手法」として、さまざまな分野の専門家や学識者とチームを組むことが多く、今回も「チーム・イン・チーム方式」を採用。「プロジェクトに最適なチームを組む」との観点から、ランドスケープデザインのE-DESIGN、建築設計の畑友洋建築設計事務所、交通計画のモビリティデザイン工房(五十嵐淳氏)でJVを構成し、「ランドスケープと建築、交通が対等かつ一体的にデザインを決めていく」体制とした。

 提案では、灘駅の南には兵庫県立美術館など、北には同館の分館となる原田の森ギャラリーなどがあることを踏まえ、駅前広場をアートのある街のテラスと位置付けた。駅舎と広場全体を鉄道の駅から街の駅へと転換し、さらに駅前を美術館の前庭のような空間とすることで、「美術館のある街」から「街全体が美術館」となることを意図した。

 駅南側の広場はニューヨーク近代美術館の中庭空間をイメージし、屋外彫刻などのアート作品を展示。北側の広場はイベントスペースやキッチンカースペース、風を防ぐ樹木などがある快適性を高めた空間とし、「近隣の住民にも、この地への来訪者にも配慮した提案としているのも大きなポイント」と説明する。

 また、従来の駅前広場は大きな段差や土留め壁で囲い込まれていたが、これをスロープと小さい段差の集積体に還元してバリアフリー化するとともに、シームレスにまちとつながるようにしている。

シームレスにまちとつながる広場


 これらの提案内容は、市もプロポーザルの選定理由で「駅前がドラスティックに変わる」と期待感を示すが、コスト面など詰めていかなければならない課題も多い。実現に向け、今後は地元住民や各関係者らが参加するワークショップを開催する方針で、「ここで得られた意見などを設計にフィードバックするとともに、その後の維持・運営に協力してくれるファンを増やしたい」と語る。概略設計業務の委託期間は2021年3月末まで。業務地は灘区岩屋北町7-3ほか。

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