【令和の洗礼~ゼネコン 工事粗利の現在地】瞬く間に変化する競争環境(上) | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【令和の洗礼~ゼネコン 工事粗利の現在地】瞬く間に変化する競争環境(上)

 大手・準大手ゼネコンの完成工事総利益率(工事粗利率)が低下している。受注競争の激化、資材価格の上昇、コロナ禍の影響など、さまざまな要因が絡み合った結果だが、特に大手ゼネコンの建築工事は落差が大きい。大都市部の大型建築プロジェクトでの受注競争に加え、地方部も含めコロナ禍での受注確保に向けて競争の火種が大きくなったとの見方がある。

【大手の建築 7.0%に低下へ】

 上場大手ゼネコン4社の平均工事粗利率を振り返ると、2005年3月期から15年3月期まで10期以上にわたって1桁台が続き、なかには3-4%台の苦境もあった。その後16年3月期には11.2%と2桁台に急上昇、18年3月期は15.0%のピークに達した。2桁台を維持できたのは21年3月期までの6期で、22年3月期は8.9%に低下すると予想している。わずか1年で前期比4.6ポイントも減少することになり、ここ十数年では経験したことがない急降下となる。

 折れ線グラフは、平成後半に急勾配の山を形作り、令和前半には急勾配の下り坂を描く。急勾配は、事業環境や競争環境が変化するスピードの速さの表れでもある。

 今回、粗利率が急速に低下したのは、建築の影響が大きい。16年3月期から21年3月期までの6期は2桁台を維持してきたものの、22年3月期は4.3ポイント減の7.0%まで低下する見通し。特に民間の大型工事では、受注時採算が悪化した。

 一方、土木の粗利率の推移をみると、同様に16年3月期から2桁台に回復し、17年3月期以降は10%台後半の高水準で推移してきた。21年3月期には20.4%の大台に乗せたが、22年3月期は15.4%を予想している。土木も5.0ポイントの大きな減少だが、水準自体は建築の倍以上あるため、一定の下支え効果が期待できる。

 工事粗利の低下要因はさまざまだ。現在の低下には資材価格の上昇も一定の影響を与えているが、競争に伴う受注時採算の悪化がより大きい。プロジェクトが大型化しているため、利益改善が期待どおりに進まない側面もある。

 コロナ禍以前から低価格受注がささやかれていた大型案件もあったが、やはりコロナの影響は大きい。事業環境が一変し、受発注者双方のマインドに大きな変化をもたらした。大きなダメージを受けたホテルや商業施設に加え、リモートワークの普及による「オフィス不要論」などは、民間発注者の肝を冷やし、シビアさを増した。一方、工事量の減少懸念に代表されるように、受注者の競争心理にも焦りと変化が生じた。

 

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