【令和の洗礼~ゼネコン 工事粗利の現在地】瞬く間に変化する競争環境(下) | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

公式ブログ

【令和の洗礼~ゼネコン 工事粗利の現在地】瞬く間に変化する競争環境(下)

 準大手ゼネコンの粗利率も低下傾向にあるが、大手ほどの急勾配ではない。これまでの水準が大手ほど高くなかったためだ。ただ、受注時採算の低下は、準大手にとっても大きな課題となっている。

【準大手も1桁台に】

 工事粗利率の土建内訳を公表している準大手19社の平均で推移をみると、2013年3月期の4.3%から右肩上がりを続け、17年3月期には11.4%と1桁台を脱した。2桁台を維持できたのは21年3月期までの5期で、22年3月期は9.5%を予想している。

 大手と同様、土木よりも建築の下げ幅が大きい。建築の粗利率は低迷期を経て、13年3月期から上昇気流に乗った。17年3月期に2桁台に届いたものの、その後は9%前後で推移を続け、22年3月期は前期比1.5ポイント減の7.7%を予測している。土木は、13年3月期からピークを迎えた19年3月期まで6期連続で増加した。22年3月期は11.6%で1.1ポイント減少する見通しだ。

 粗利率が低下した原因の1つに受注競争がある。民間の大型プロジェクトでの競争激化だけでなく、公共工事の入札でも調査基準価格を下回る額での応札が目立つようになった。

 例えば、宮城県の教育施設の入札では、大手・準大手による応札13JVのうち、10JVが調査基準価格と同額の47億4342万8000円に張り付いた。2番札はそこから2万8000円安い47億4340万円、1番札はさらに40万円低い47億4300万円だった。積算精度の向上とともに、痛みを伴う受注戦略が増えた。

 「戦略的価格」によるライバル会社の抜け駆けに戦々恐々とする心理が、競争にさらに拍車をかける。都市部の再開発事業などは大型化しているため、低価格受注や損失が大きな傷跡となるケースもある。

 土木と違って大型の設計変更が見込めない建築は、現場所長の手腕で挽回するにも一定の限界があり、ダメージが財務諸表に残りやすい。平成の苦境がそうだったように、競争激化のスパイラルに陥ると、抜け出すのは容易ではない。一方の土木は、国内では公共工事が主体のため、安定政権下では経済対策や産業政策などの恩恵を受けやすいが、海外事業などでは大きな損失を出した期もあった。

 粗利率のあるべき水準は各社の台所事情によっても異なるが、「建築は最低でも9%は欲しい」(準大手ゼネコン)といった本音も漏れる。生産性向上やDX(デジタルトランスフォーメーション)、未来に向けた投資、カーボンニュートラル対策、技能労働者の処遇改善など、いずれも原資を必要とする課題が山積している。

 「令和の洗礼」をどう乗り切るか。平成で学んだ教訓は少なくない。
 

※13年3月期は合併前の安藤ハザマを除いた18社、22年3月期通期予想は非開示の東鉄工業を除いた18社となっている。

 

【公式ブログ】ほかの記事はこちらから
 

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら