連載・BIM未来図・ダイダン(下) | 建設通信新聞Digital

5月2日 金曜日

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連載・BIM未来図・ダイダン(下)

関係者がACCで密に情報共有
(左から)杉浦氏、大井手氏、 山中氏、中西氏、鈴木氏   
【価値創出に向けたワークフロー改革/データ活用の価値最大化へ】
 ダイダンの山中康宏社長は、オートデスクと結んだMOU(戦略的提携)を機に「当社は業務効率化の新たなステージへと踏み込む」と強調する。BIMを活用したワークフロー改革を働き方改革の手段に位置付けるとともに、空調、衛生、電気設備のデータ連携による総合力を発揮させることで「BIM活用の価値を最大化していく」と手応えを口にする。
 近年、オートデスクは設備工事会社との関係性を強めてきた。2022年2月の高砂熱学工業を皮切りに、24年3月に新菱冷熱工業とMOUを結び、ダイダンは3社目となる。オートデスクの中西智行社長は「BIM導入の流れがデータをつくる時代からデータを有効に使う時代に変わりつつある中で、世界的にも設備BIMの動きは顕著になっている」とし、ダイダンとのMOUでは「電気設備を含めた総合設備のワークフロー連携を支援できることは当社にとっても貴重な場になる」と受け止めている。
 ダイダンは空調、衛生、電気設備のBIMデータ連携を図る上で、オートデスクのBIMソフト『Revit』の定着に並行して、建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』をCDE(データ共有環境)基盤に位置付け、蓄積データの高度利用を推し進める。山中社長は「関係者がACCを使って密に情報を共有する流れを確立できなければ、われわれが目指すBIMには到達できない」と強調する。
 オートデスクが日本国内でACCの販売を本格化したのは22年4月からだが、既に国内企業によるユーザー会が発足するなど、導入企業が急速に拡大している。ACCを最大限に活用するためには構造化されたデータの蓄積が欠かせない。ダイダンにとっても従来の業務プロセスを大きく変えざる得ない部分も出てくる。オートデスクの鈴木美秀業務執行役員日本地域営業統括建築・土木営業本部長は「われわれが国内外で培ったノウハウを使い、全面的に支援していきたい」と語る。
 RevitデータをACC上でリアルタイムに共有できれば空調、衛生、電気設備のモデル作成をシームレスに共同作業化でき、元請け企業の建築(Revit)モデルともデータ変換なく密接に連携できる。Revitはデータベースとして扱いやすいパラメーターを持つため、ユニットの標準化やオフサイト生産とも相性が良い。中西社長は「われわれのソリューションの特長はBIMデータ活用の拡張性にある」と力を込める。
 ダイダンがBIM活用を軸に総合設備業としてのメリットを最大化することができれば、オフサイト生産のさらなる強化にもつながる。Revitデータを軸に企業同士の連携も図りやすくなる。山中社長は「オフサイト施設を同じ現場で仕事をする他の設備、電気工事会社とユニットの組み立て・搬入を行うなど、より効率的な使い方も考えられる」と期待をのぞかせる。
 25年3月期から3カ年の現行中期経営計画を「磨くステージ」に位置付けるダイダンにとって、BIMを活用したワークフロー改革は新たな企業価値を創出するための取り組みに他ならない。BIMの定着によって人員配置の最適化や、リアルタイムに工事量を把握できるデータ活用の切り口も生まれる。受注プロジェクトを通して蓄積したさまざまなデータを分析することで、受注計画や事業評価など経営判断ツールとしての活用も可能だ。「われわれの業務を多角的に分析できる武器として『ダイダンのBIM』をしっかりと育てていきたい」。山中社長は先頭に立ってBIMのワークフロー改革を呼びかけている。