新年度が始まり、建設に携わる企業や省庁に“期待の新人”が入ってきた。就活市場は超売り手市場。卒業1年前の3月時点で、大学生の約半数は内定を受けているという調査結果もある。引く手あまたの中から、建設業をファーストキャリアに決めた背景には何があるのか。1日に第一歩を踏み出した新社会人に話を聞いた。 躯体専門工事大手の向井建設に入社した五十嵐雅人さんは、現場で働く父を追いかけて業界へ。施工管理者として大勢に指示を出し、現場をまとめる姿に憧れた。社会人としての抱負は「何事にも挑戦する」。「いつか、目標とする父を超える。そんな勢いで頑張る」と力を込めた。今後しばらくは、同期と共に外部施設で合宿し、実技も交えた研修を受けるという。「まずは資格を取る。失敗も経験しながら“いい大人”になりたい」と語った。
大林組の馬場琉斗さんは、建築が好きで、昨今の環境問題に着目し、木造中高層などで存在感を示す同社を志望した。「意匠設計に携わりたい」と話し、「環境問題の解決に貢献できる技術力に、新しいデザインが重なり合った時、大林組にしかできない建築ができるはずだ」とこれからの仕事に期待を膨らませる。会長、社長からの訓示を受けて「大林組に入る責任というものを感じるとともに、一番忘れてはいけないのは野心だ」との思いを語り、高い志で社会人生活へ歩みを進める。
国土交通省関東地方整備局の村元美月さんは、近年、頻発する災害をきっかけに「自分に何ができるか」と考え、都市再生や防災を広く所管する同省を志した。試験勉強などを通じ、公共事業を進める上で住民の理解を得ることの大切さを知り、「いずれは用地業務に携わってみたい」とも。社会人のスタートに当たり「先輩方のサポートを受けながら日々スキルアップを目指したい」と意気込む。
関電工に技術職で入社し、建設業を目指すきっかけに「建設業でのアルバイト」を挙げたのは砂田翔さん。「職人さんや技術者さんとのコミュニケーションが楽しく、働く雰囲気もとても良かった」ことが決め手になった。「将来は国民の誰もが知るランドマーク的な施設の工事を手掛けたい」と夢を描く。配電線の技能職で入社した長崎啓徳さんは「普段、目にする電柱での工事の姿」に憧れを抱き、4K(給与・休暇・希望・かっこいい)の一つ“かっこいい”から同社を目指した。「仕事もプライベートでも、どんどん目標を持って、それに近づけるようにしたい」と先を見つめる。事務職で入社の和田明華鈴さんの志望動機は、「日常生活の基盤を支える仕事がしたかった」から。「現場で働く社員を支え、ウェルビーイングを高めていけるよう、少しでも力になりたい」と思いを巡らす。
横浜市に本社を置く渡辺組の森玲那さんは「社会人としての第一歩を、幼い頃に利用していた建物の施工会社で迎えられ、うれしく思っている」と喜びを語る。辞令を受け、「分からないことがたくさんあると思うが、一生懸命頑張りたい」と気を引き締めた。
* *
リクルートが3月に実施した調査によれば、2025年3月卒の大学3年・院生の就職先のうち、建設業が占める割合は前年同期比0.1ポイント減の3.6%だった。マイナスは3年連続で、22年の6.7%から半分近くまで落ち込んでいる。
より快適な職場環境が求められる中、建設現場は夏暑く、冬は寒い。その上、時に危険を伴うこともあるのに、現場技能者の賃金は低いまま--。働き方改革や改正建設業法を武器に、業界は今、この現実を変えようとしている。
こうした過渡期にあり、人生の大きな分岐点で建設業を選び、希望を持って踏み出した若者たち。純粋無垢(むく)な思いを業界の一人ひとりがいかに受け止めるのか。建設業界の本気度が試されている。
大林組の馬場琉斗さんは、建築が好きで、昨今の環境問題に着目し、木造中高層などで存在感を示す同社を志望した。「意匠設計に携わりたい」と話し、「環境問題の解決に貢献できる技術力に、新しいデザインが重なり合った時、大林組にしかできない建築ができるはずだ」とこれからの仕事に期待を膨らませる。会長、社長からの訓示を受けて「大林組に入る責任というものを感じるとともに、一番忘れてはいけないのは野心だ」との思いを語り、高い志で社会人生活へ歩みを進める。
国土交通省関東地方整備局の村元美月さんは、近年、頻発する災害をきっかけに「自分に何ができるか」と考え、都市再生や防災を広く所管する同省を志した。試験勉強などを通じ、公共事業を進める上で住民の理解を得ることの大切さを知り、「いずれは用地業務に携わってみたい」とも。社会人のスタートに当たり「先輩方のサポートを受けながら日々スキルアップを目指したい」と意気込む。
関電工に技術職で入社し、建設業を目指すきっかけに「建設業でのアルバイト」を挙げたのは砂田翔さん。「職人さんや技術者さんとのコミュニケーションが楽しく、働く雰囲気もとても良かった」ことが決め手になった。「将来は国民の誰もが知るランドマーク的な施設の工事を手掛けたい」と夢を描く。配電線の技能職で入社した長崎啓徳さんは「普段、目にする電柱での工事の姿」に憧れを抱き、4K(給与・休暇・希望・かっこいい)の一つ“かっこいい”から同社を目指した。「仕事もプライベートでも、どんどん目標を持って、それに近づけるようにしたい」と先を見つめる。事務職で入社の和田明華鈴さんの志望動機は、「日常生活の基盤を支える仕事がしたかった」から。「現場で働く社員を支え、ウェルビーイングを高めていけるよう、少しでも力になりたい」と思いを巡らす。
横浜市に本社を置く渡辺組の森玲那さんは「社会人としての第一歩を、幼い頃に利用していた建物の施工会社で迎えられ、うれしく思っている」と喜びを語る。辞令を受け、「分からないことがたくさんあると思うが、一生懸命頑張りたい」と気を引き締めた。
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リクルートが3月に実施した調査によれば、2025年3月卒の大学3年・院生の就職先のうち、建設業が占める割合は前年同期比0.1ポイント減の3.6%だった。マイナスは3年連続で、22年の6.7%から半分近くまで落ち込んでいる。
より快適な職場環境が求められる中、建設現場は夏暑く、冬は寒い。その上、時に危険を伴うこともあるのに、現場技能者の賃金は低いまま--。働き方改革や改正建設業法を武器に、業界は今、この現実を変えようとしている。
こうした過渡期にあり、人生の大きな分岐点で建設業を選び、希望を持って踏み出した若者たち。純粋無垢(むく)な思いを業界の一人ひとりがいかに受け止めるのか。建設業界の本気度が試されている。