【発展途上国の初動支援に/多様な地形の解析モデル構築】
世界で多発・深刻化する洪水災害への備えとして、衛星を利用した新たな技術開発が進行中だ。パシフィックコンサルタンツとGaia Visionが目指すのは、衛星と地上データを統合し、短期間で被害と被害要因を把握するシステムだ。被害状況や被害要因を迅速に情報提供することで、災害に脆弱(ぜいじゃく)な地域社会の初動対応や復旧・復興支援につなげる。 開発中のシステムは、衛星画像を空間解析して浸水深や浸水範囲を抽出し、水理解析と連携させて洪水の発生経路と影響範囲を3次元的に再現する仕組みだ。一定の精度を保った初動1週間以内の解析と全球対応が特徴で、行政の災害対応の意思決定や復旧判断に資する情報を提供する。
パシフィックコンサルタンツ国際インフラ開発部の湯浅岳史シニア・アドバイザーは「浸水域の人口やインフラを把握し、浸水状況、被害要因や病院などの重要施設の被害状況を素早く提供したい」と話す。
途上国で発生した自然災害の支援では、「現地に入っても全体像がつかめない。被害の広がりや、危険な箇所が分からないまま調査を始めることもある」と語るように、海外で即応体制が未整備の地域では人的調査に頼るしかなく、被害把握が遅れてしまう。
それだけに、初動支援に必要な情報を早期に提供できれば、「インフラの整備が進んでいない国々でも、多くの人命を守り、いち早い復旧が期待できる」と力を込める。
同社河川部の吉武央気室長は「浸水・被害状況や被害要因のそれぞれを個別に提供するサービスは存在しているが、衛星画像解析と水理解析を工学的知見の裏付けを持って統合し、提供する仕組みはこれまでにない」と強調し、将来的には復興対策の提案をシステムに盛り込む考えも示す。
技術開発に当たっては、Gaia Visionと連携し、衛星画像の取得から初動解析、意思決定に至るまでの一連の支援プロセスを構築する。
Gaia Visionは全球での洪水氾濫シミュレーションの解析技術を生かす。パシフィックコンサルタンツは衛星画像解析や氾濫流シミュレーションに基づく被害状況の推定や、各種解析結果の妥当性評価、被害要因に基づいた復旧提案などを担う。
取り組みは「衛星データを活用した全球洪水被害の即時3次元解析情報提供サービスの実証」として2月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の2024年度宇宙戦略基金のうち、「衛星データ利用システム海外実証(フィージビリティスタディー)」に採択された。4月から開発がスタートし、2年間で技術開発に取り組む。
3期に分けて進める開発の1期は、パキスタンなどで過去に発生した洪水を対象に空間解析・水理解析などのツール単体の精度や有効性を確認する。「異なる技術の誤差や出力形式の違いをどう統合するか」が焦点だと湯浅氏は話す。続く2期では、個別技術を一つのプラットフォームにまとめ、全体動作を検証。3期は全球対応の統合システム完成を目指す。
「都市や農村、平地や山間部など多様なフィールドに対応するには、汎用(はんよう)性と再現性を兼ね備えた解析モデルの構築が必要だ」と吉武氏は課題を語る。建物や田畑を通過する水の流れ方は異なり、それぞれに応じた抵抗値や地形特性をモデルに反映させる調整が求められる。こうした条件設定を初めは手作業で進めながら、最終的には「なるべく多くの事象を自動で再現したい」と展望する。
技術の海外展開をJAXAが支援する。将来的には、各国政府や援助機関、保険・建設業界などへの展開も視野に入れている。
世界で多発・深刻化する洪水災害への備えとして、衛星を利用した新たな技術開発が進行中だ。パシフィックコンサルタンツとGaia Visionが目指すのは、衛星と地上データを統合し、短期間で被害と被害要因を把握するシステムだ。被害状況や被害要因を迅速に情報提供することで、災害に脆弱(ぜいじゃく)な地域社会の初動対応や復旧・復興支援につなげる。 開発中のシステムは、衛星画像を空間解析して浸水深や浸水範囲を抽出し、水理解析と連携させて洪水の発生経路と影響範囲を3次元的に再現する仕組みだ。一定の精度を保った初動1週間以内の解析と全球対応が特徴で、行政の災害対応の意思決定や復旧判断に資する情報を提供する。
パシフィックコンサルタンツ国際インフラ開発部の湯浅岳史シニア・アドバイザーは「浸水域の人口やインフラを把握し、浸水状況、被害要因や病院などの重要施設の被害状況を素早く提供したい」と話す。
途上国で発生した自然災害の支援では、「現地に入っても全体像がつかめない。被害の広がりや、危険な箇所が分からないまま調査を始めることもある」と語るように、海外で即応体制が未整備の地域では人的調査に頼るしかなく、被害把握が遅れてしまう。
それだけに、初動支援に必要な情報を早期に提供できれば、「インフラの整備が進んでいない国々でも、多くの人命を守り、いち早い復旧が期待できる」と力を込める。
同社河川部の吉武央気室長は「浸水・被害状況や被害要因のそれぞれを個別に提供するサービスは存在しているが、衛星画像解析と水理解析を工学的知見の裏付けを持って統合し、提供する仕組みはこれまでにない」と強調し、将来的には復興対策の提案をシステムに盛り込む考えも示す。
技術開発に当たっては、Gaia Visionと連携し、衛星画像の取得から初動解析、意思決定に至るまでの一連の支援プロセスを構築する。
Gaia Visionは全球での洪水氾濫シミュレーションの解析技術を生かす。パシフィックコンサルタンツは衛星画像解析や氾濫流シミュレーションに基づく被害状況の推定や、各種解析結果の妥当性評価、被害要因に基づいた復旧提案などを担う。
取り組みは「衛星データを活用した全球洪水被害の即時3次元解析情報提供サービスの実証」として2月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の2024年度宇宙戦略基金のうち、「衛星データ利用システム海外実証(フィージビリティスタディー)」に採択された。4月から開発がスタートし、2年間で技術開発に取り組む。
3期に分けて進める開発の1期は、パキスタンなどで過去に発生した洪水を対象に空間解析・水理解析などのツール単体の精度や有効性を確認する。「異なる技術の誤差や出力形式の違いをどう統合するか」が焦点だと湯浅氏は話す。続く2期では、個別技術を一つのプラットフォームにまとめ、全体動作を検証。3期は全球対応の統合システム完成を目指す。
「都市や農村、平地や山間部など多様なフィールドに対応するには、汎用(はんよう)性と再現性を兼ね備えた解析モデルの構築が必要だ」と吉武氏は課題を語る。建物や田畑を通過する水の流れ方は異なり、それぞれに応じた抵抗値や地形特性をモデルに反映させる調整が求められる。こうした条件設定を初めは手作業で進めながら、最終的には「なるべく多くの事象を自動で再現したい」と展望する。
技術の海外展開をJAXAが支援する。将来的には、各国政府や援助機関、保険・建設業界などへの展開も視野に入れている。