【10年後見据え担い手確保/新技術で地球環境にも貢献】
日本道路建設業協会(西田義則会長)は、創立80周年の節目を迎えた今年、10年後の2035年を見据えた総合的な取り組みを盛り込んだ『中期ビジョン2025』を策定・公表した。「この道が繋ぐみんなの未来-人とクルマ、地球環境に優しい道づくり」と銘打ち、持続可能な道路建設業の実現に向けた道筋を描いた。 中期ビジョンは、▽道路建設業の使命▽事業の継続性と安定した企業経営▽メンテナンス時代の戦略的道路管理▽担い手の確保・育成▽生産性の向上▽事業領域の拡大▽道路工事の安全対策▽環境を重視した人に優しい社会の実現▽災害への対応力と地域防災力の強化▽舗装事業の海外進出--という10の主要テーマを掲げた。
冒頭では、道路インフラの整備・充実を通じて、短期的な経済効果にとどまらず、中長期にわたりストック効果を発揮し、経済発展や国民生活の質の向上に寄与するとともに、自然災害からの迅速な復旧・復興に備えた施工体制の確保に最善の努力を尽くすことが、道路建設業の使命だと宣言した。
■多様な人材を受け入れ
人口減少社会において、豊かで安全・安心な国土形成に貢献するため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した道路管理システムの導入を進め、効率性と安全性の向上を目指す。少子高齢化で労働力の確保が困難になる中、外国人や女性の採用など多様性の積極的な受け入れを推進する。省人化・無人化技術などの活用に求められる個々人のスキルアップを促すための情報発信や学習機会も充実させる。
全ての取り組みの根底に備えるべき国民理解の獲得と深化にも注力する。従来から実施している現場見学会などイベントの継続開催のほか、環境に貢献する技術や災害復旧活動などの実績の見える化を業界を挙げて推進する。
■安定的な事業量が不可欠
国内のアスファルト合材製造数量は近年減少傾向にある。1992年度のピーク時は8083万tあったが、2023年度は3636万tに落ち込み、4000万tを割り込む状況となった。特に最近は、原材料の価格上昇に伴う実質的な工事量の減少などが影響している。
合材製造業は、激甚化・頻発化する豪雨災害や潜在的な地震への備えと復旧、インフラ老朽化への対応など、国民生活の基盤を支える公共性の高い産業と強調。今後もアスファルト合材を安定供給するためには、公共事業の安定的・持続的な発注が必要不可欠と訴えている。
■予防保全型メンテを実践
建設から50年以上経過する老朽インフラが加速度的に増加している。舗装点検は22年度から2巡目の点検が始まり、国土交通省が管理する道路では約45%、都道府県・政令市管理は約38%で済んでいる。ただ、23年度末時点で「修繕段階(区分III)」と判定されたアスファルト舗装のうち、措置に着手した割合は、国交省が25%、都道府県・政令市が3%などで、修繕の着手率と完了率は全体的に低水準にとどまっている。なかでも、地方自治体の管理道路は対応が急務だ。
予防保全型維持管理の重要性は論をまたないが、多くの自治体は人材不足や財政面、技術面、管理体制に課題を抱えている。実務への実装にはハードルが残るものの、PPP・PFIや地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)といった新たなマネジメント手法の普及・定着にも取り組む。
舗装マネジメントに重要となる定量的な評価基準の確立と運用に向け、最新技術の積極的な導入と関係者間の連携強化を推進する。産学官の連携・協力で道路管理基準の検討を進める。舗装のプロフェッショナルとして、技術支援や提案、診断などに参画し、理想的なPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルの構築を目指す。
舗装は材料や施工場所の違い、アスファルト混合物を含む材料の品質管理、工程管理など極めて高い専門性を必要とする。今後はデジタル技術による診断と、人(舗装診断士)の診断を必要とする基準を確立し、最新のテクノロジーと専門家の知識を組み合わせた診断基準を検討する。
■ソーシャルメディアを活用
若年層の入職促進に向けた業界の魅力発信には、ユーチューブやインスタグラムなどのソーシャルメディアを積極的に活用する。幼児期、学生期、就職期といったタイミングに応じて将来の担い手を引きつけるコンテンツを用意する。現場見学会や出前授業を継続開催し、進化する道路建設業の「今」を体験してもらう。
同時に、労働時間の短縮や週休2日、有給休暇取得率の向上といったワークライフバランスの実現、賃金の上昇、育児や介護をしやすい環境整備などの処遇改善を進め、担い手の定着にも努める。
■10%の生産性向上が目標
働き方改革を加速化する観点からも、意欲的な目標として10%の生産性向上を設定した。そのため、現場の省力化・効率化と施工の標準化、新技術・新工法の開発促進、施工体制・請負構造の改善に積極的に取り組む。
環境面では、脱炭素技術の開発や普及拡大でGX(グリーントランスフォーメーション)のリーディング産業を目指す。ICTや革新的建機の活用をはじめ、アスファルト代替材料や石油代替燃料を模索し、低炭素舗装や中温化アスファルト合材の普及を促進する。
日本道路建設業協会(西田義則会長)は、創立80周年の節目を迎えた今年、10年後の2035年を見据えた総合的な取り組みを盛り込んだ『中期ビジョン2025』を策定・公表した。「この道が繋ぐみんなの未来-人とクルマ、地球環境に優しい道づくり」と銘打ち、持続可能な道路建設業の実現に向けた道筋を描いた。 中期ビジョンは、▽道路建設業の使命▽事業の継続性と安定した企業経営▽メンテナンス時代の戦略的道路管理▽担い手の確保・育成▽生産性の向上▽事業領域の拡大▽道路工事の安全対策▽環境を重視した人に優しい社会の実現▽災害への対応力と地域防災力の強化▽舗装事業の海外進出--という10の主要テーマを掲げた。
冒頭では、道路インフラの整備・充実を通じて、短期的な経済効果にとどまらず、中長期にわたりストック効果を発揮し、経済発展や国民生活の質の向上に寄与するとともに、自然災害からの迅速な復旧・復興に備えた施工体制の確保に最善の努力を尽くすことが、道路建設業の使命だと宣言した。
■多様な人材を受け入れ
人口減少社会において、豊かで安全・安心な国土形成に貢献するため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用した道路管理システムの導入を進め、効率性と安全性の向上を目指す。少子高齢化で労働力の確保が困難になる中、外国人や女性の採用など多様性の積極的な受け入れを推進する。省人化・無人化技術などの活用に求められる個々人のスキルアップを促すための情報発信や学習機会も充実させる。
全ての取り組みの根底に備えるべき国民理解の獲得と深化にも注力する。従来から実施している現場見学会などイベントの継続開催のほか、環境に貢献する技術や災害復旧活動などの実績の見える化を業界を挙げて推進する。
■安定的な事業量が不可欠
国内のアスファルト合材製造数量は近年減少傾向にある。1992年度のピーク時は8083万tあったが、2023年度は3636万tに落ち込み、4000万tを割り込む状況となった。特に最近は、原材料の価格上昇に伴う実質的な工事量の減少などが影響している。
合材製造業は、激甚化・頻発化する豪雨災害や潜在的な地震への備えと復旧、インフラ老朽化への対応など、国民生活の基盤を支える公共性の高い産業と強調。今後もアスファルト合材を安定供給するためには、公共事業の安定的・持続的な発注が必要不可欠と訴えている。
■予防保全型メンテを実践
建設から50年以上経過する老朽インフラが加速度的に増加している。舗装点検は22年度から2巡目の点検が始まり、国土交通省が管理する道路では約45%、都道府県・政令市管理は約38%で済んでいる。ただ、23年度末時点で「修繕段階(区分III)」と判定されたアスファルト舗装のうち、措置に着手した割合は、国交省が25%、都道府県・政令市が3%などで、修繕の着手率と完了率は全体的に低水準にとどまっている。なかでも、地方自治体の管理道路は対応が急務だ。
予防保全型維持管理の重要性は論をまたないが、多くの自治体は人材不足や財政面、技術面、管理体制に課題を抱えている。実務への実装にはハードルが残るものの、PPP・PFIや地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)といった新たなマネジメント手法の普及・定着にも取り組む。
舗装マネジメントに重要となる定量的な評価基準の確立と運用に向け、最新技術の積極的な導入と関係者間の連携強化を推進する。産学官の連携・協力で道路管理基準の検討を進める。舗装のプロフェッショナルとして、技術支援や提案、診断などに参画し、理想的なPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルの構築を目指す。
舗装は材料や施工場所の違い、アスファルト混合物を含む材料の品質管理、工程管理など極めて高い専門性を必要とする。今後はデジタル技術による診断と、人(舗装診断士)の診断を必要とする基準を確立し、最新のテクノロジーと専門家の知識を組み合わせた診断基準を検討する。
■ソーシャルメディアを活用
若年層の入職促進に向けた業界の魅力発信には、ユーチューブやインスタグラムなどのソーシャルメディアを積極的に活用する。幼児期、学生期、就職期といったタイミングに応じて将来の担い手を引きつけるコンテンツを用意する。現場見学会や出前授業を継続開催し、進化する道路建設業の「今」を体験してもらう。
同時に、労働時間の短縮や週休2日、有給休暇取得率の向上といったワークライフバランスの実現、賃金の上昇、育児や介護をしやすい環境整備などの処遇改善を進め、担い手の定着にも努める。
■10%の生産性向上が目標
働き方改革を加速化する観点からも、意欲的な目標として10%の生産性向上を設定した。そのため、現場の省力化・効率化と施工の標準化、新技術・新工法の開発促進、施工体制・請負構造の改善に積極的に取り組む。
環境面では、脱炭素技術の開発や普及拡大でGX(グリーントランスフォーメーション)のリーディング産業を目指す。ICTや革新的建機の活用をはじめ、アスファルト代替材料や石油代替燃料を模索し、低炭素舗装や中温化アスファルト合材の普及を促進する。