【異業種シナジー創出を】
日本工営の新社長に1日付で福岡知久氏が就任する。組織改革や分社化、東京海上ホールディングス(HD)による完全子会社化といった激動を経て、さらなる飛躍を目指す同社のかじを取る。変革を通して生じた課題への対応や、事業成長の鍵を握る東京海上HDとのシナジー創出、グローバル戦略の方向性などについて、福岡新社長に展望を聞いた。--就任の抱負を
「2020年の組織改革で、国内外事業を統合し、23年の持ち株会社ID&EHD設立、25年の東京海上HDによるTOB(株式公開買い付け)と完全子会社化に至るまで、大きな変革が立て続けに起きた5年間だった。この間に生じたさまざまな課題を整理・解決し、次の時代に向かうための土台を築きたい」
--組織が抱える課題とは
「統合や分社化によって、業務効率や関係性の見直しが必要になっている。グループ会社間の連携について以前より壁を感じるとの声が聞かれる一方、HD内に共創戦略会議を設けたことで、連携が促進されたという前向きな評価もある。社内の意見を踏まえ最適な体制を検討していく」
「従業員エンゲージメントの向上も大きな課題だ。社員一人ひとりが組織や仕事に対し愛着や情熱を持てる環境がつくれなければ、会社の持続的な成長はあり得ない。若手育成や柔軟な働き方など、変化に対応できる制度や仕組みの早急な構築が必要だ」
--注力することは
「最重点事項は東京海上HDとのシナジー創出だ。協議段階から関わってきたプロジェクトであり、5年、10年先を見据えて成果を上げられる形にしていく。その礎を築くことが、自分に課された最大の使命だ」
--東京海上HDとの連携については
「東京海上HDの持つ営業ネットワークなどを生かし、これまでアクセスできなかった顧客へのアプローチを強化したい。BtoB領域での知名度向上、マーケティング機能の強化、民間市場での展開策など、シナジー発現に向けた課題は多いが、だからこそ楽しみにも感じている」
「両HDとの間で設置した会議の場を通じて、取締役などを交えた高頻度の議論が交わされている。当社もワーキンググループを通じた連携を深め、支店同士の自主的な協業が進むなど、組織内の協業が根付き始めている」
「連携の議論が最も進んでいるのは防災ソリューション分野だ。災害時の経済的損失と実際に保険で補償される金額との間にある『プロテクションギャップ』という課題と、当社が磨いてきたリスク評価や復興支援の技術が一致し、有望な展開が見えてきた」
--海外戦略の方向性は
「インフラ需要が高い国々ではPPP型事業が増加しており、従来のODA(政府開発援助)中心モデルからのポートフォリオ転換が必要だ。特に、インドやバングラデシュなどでは現地法人の事業展開が加速しており、社内での海外事業の存在感は日増しに大きくなっている。この先の国際競争を勝ち抜くためにも、現地のビジネス習慣・契約文化を理解し、実務を担える人材を拡充したい」
* *
(ふくおか・ともひさ)1988年3月東工大(現東京科学大)大学院総合理工学研究科社会開発工学専攻修了後、同年4月日本工営入社。2018年執行役員コンサルタント国内事業本部基盤技術事業部長、20年常務執行役員コンサルティング事業統括本部副事業統括本部長、21年取締役、23年代表取締役兼副社長執行役員を経て現職。63年6月5日生まれ、62歳。
◆
仕事で大切にしてきたことを尋ねると「『できるできない』ではなく『やるかやらないか』を考えてやってきた」ときっぱり。いざ取り組む際には、『孫子』の「勝兵は先(ま)ず勝ちて而(しか)る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む」を引き合いに、徹底した事前準備や対策の重要性を説いた。戦略的思考に裏打ちされた実行力で激動を経た同社をけん引する。
日本工営の新社長に1日付で福岡知久氏が就任する。組織改革や分社化、東京海上ホールディングス(HD)による完全子会社化といった激動を経て、さらなる飛躍を目指す同社のかじを取る。変革を通して生じた課題への対応や、事業成長の鍵を握る東京海上HDとのシナジー創出、グローバル戦略の方向性などについて、福岡新社長に展望を聞いた。--就任の抱負を
「2020年の組織改革で、国内外事業を統合し、23年の持ち株会社ID&EHD設立、25年の東京海上HDによるTOB(株式公開買い付け)と完全子会社化に至るまで、大きな変革が立て続けに起きた5年間だった。この間に生じたさまざまな課題を整理・解決し、次の時代に向かうための土台を築きたい」
--組織が抱える課題とは
「統合や分社化によって、業務効率や関係性の見直しが必要になっている。グループ会社間の連携について以前より壁を感じるとの声が聞かれる一方、HD内に共創戦略会議を設けたことで、連携が促進されたという前向きな評価もある。社内の意見を踏まえ最適な体制を検討していく」
「従業員エンゲージメントの向上も大きな課題だ。社員一人ひとりが組織や仕事に対し愛着や情熱を持てる環境がつくれなければ、会社の持続的な成長はあり得ない。若手育成や柔軟な働き方など、変化に対応できる制度や仕組みの早急な構築が必要だ」
--注力することは
「最重点事項は東京海上HDとのシナジー創出だ。協議段階から関わってきたプロジェクトであり、5年、10年先を見据えて成果を上げられる形にしていく。その礎を築くことが、自分に課された最大の使命だ」
--東京海上HDとの連携については
「東京海上HDの持つ営業ネットワークなどを生かし、これまでアクセスできなかった顧客へのアプローチを強化したい。BtoB領域での知名度向上、マーケティング機能の強化、民間市場での展開策など、シナジー発現に向けた課題は多いが、だからこそ楽しみにも感じている」
「両HDとの間で設置した会議の場を通じて、取締役などを交えた高頻度の議論が交わされている。当社もワーキンググループを通じた連携を深め、支店同士の自主的な協業が進むなど、組織内の協業が根付き始めている」
「連携の議論が最も進んでいるのは防災ソリューション分野だ。災害時の経済的損失と実際に保険で補償される金額との間にある『プロテクションギャップ』という課題と、当社が磨いてきたリスク評価や復興支援の技術が一致し、有望な展開が見えてきた」
--海外戦略の方向性は
「インフラ需要が高い国々ではPPP型事業が増加しており、従来のODA(政府開発援助)中心モデルからのポートフォリオ転換が必要だ。特に、インドやバングラデシュなどでは現地法人の事業展開が加速しており、社内での海外事業の存在感は日増しに大きくなっている。この先の国際競争を勝ち抜くためにも、現地のビジネス習慣・契約文化を理解し、実務を担える人材を拡充したい」
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(ふくおか・ともひさ)1988年3月東工大(現東京科学大)大学院総合理工学研究科社会開発工学専攻修了後、同年4月日本工営入社。2018年執行役員コンサルタント国内事業本部基盤技術事業部長、20年常務執行役員コンサルティング事業統括本部副事業統括本部長、21年取締役、23年代表取締役兼副社長執行役員を経て現職。63年6月5日生まれ、62歳。
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仕事で大切にしてきたことを尋ねると「『できるできない』ではなく『やるかやらないか』を考えてやってきた」ときっぱり。いざ取り組む際には、『孫子』の「勝兵は先(ま)ず勝ちて而(しか)る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む」を引き合いに、徹底した事前準備や対策の重要性を説いた。戦略的思考に裏打ちされた実行力で激動を経た同社をけん引する。