現場から・清水建設が現場初公開 静岡浅間神社天井絵の補修工事 | 建設通信新聞Digital

7月23日 水曜日

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現場から・清水建設が現場初公開 静岡浅間神社天井絵の補修工事

装●(さんずい、黄の由の上に一本線)師が高さ6mにある天井絵に仮のはく落止めをした
約40年ぶりに取り外された狩野寛信の「四方睨の龍」
落合作業所長
【日本屈指の巨大拝殿 令和の大改修/狩野派が描いた名品 次代につなげる】

 清水建設が施工する「神部神社浅間神社拝殿保存修理工事」の現場が17日、2023年10月の工事開始以降初めて報道機関に公開された。狩野派が描いた天井絵10点の補修工事が本格化するタイミングで、同日は、貴重な美術工芸品の保存修理を専門に手掛ける装●(さんずい、黄の由の上に一本線)師(そうこうし)が高所作業台車上を使って、高さ約6mにある天井絵に仮のはく落止めを施していた。天井絵を全て取り外した後、10月にも本格的な補修が始まる。 静岡市葵区に所在する神部神社浅間神社拝殿は、社殿群を構成する重要文化財26棟のうちの1棟となる。
 工事の発注者である神部神社浅間神社大歳御祖(おおとしみおや)神社は、神部神社浅間神社の社殿群を中心に重要文化財16棟について、14年11月に約20年にわたる平成・令和の大改修に着手した。昭和の大修理から約40年が経過し、柱や屋根、建具、彫刻などの外部塗装の劣化に対応する。
 富士山の威容をイメージしたとされる拝殿は1814年に完成した。切り妻造りの下層に入り母屋造りの楼を重ねた2階建ての建物で、「浅間造」と言われている。規模的には、漆塗りの木造神社建築としては日本一の高さ(21m)を誇る。1階には132畳の大広間が広がり、その大きさから「大拝殿」とも称されている。
 静岡浅間神社の中澤聰宮司は「拝殿は日本でも屈指の大きさの神社建築。静岡浅間神社の象徴でもあり、規模の大きな工事になる」と語る。
 大広間の天井には、狩野派で当代屈指の絵師として活躍した狩野榮信(ながのぶ)と狩野寛信が描いた天井絵10点が飾られている。「八方睨(にらみ)の龍」「四方睨の龍」が各1点、「迦陵頻伽(かりょうびんが)」2点、「天人」6点で、榮信と寛信が5点ずつ描いた。
 天井絵の大きさは8点が2.31×2・31m、2点が2.7×2・31mで、それぞれ4畳絵、6畳絵と呼ばれている。現在、大広間では、装●(さんずい、黄の由の上に一本線)師が高所作業台車上で順に天井絵の塗料の●(さんずい、黄の由の上に一本線)落止めの仮措置を施している。天井絵の補修に携わる装●(さんずい、黄の由の上に一本線)師の延べ人数は約1000人にも及ぶ。
 設計・監理を担当する文化財建造物保存技術協会の稲葉敦技術参与は「これだけ大きな絵を建造物修理の中で行うことは珍しい。今回の工事は私どもにとっても貴重な機会になる」と説明する。
 拝殿保存修理工事は、天井絵の補修を始め、素屋根の建設や建具の取り外しなどの仮設工事、建具や彫刻の繕い、漆塗り・彩色、銅板ぶき屋根の黒漆塗りなどの塗装工事、錺(かざり)金具の取り外し・補修などの金具工事、畳表替え、床下防蟻(ぼうぎ)処理などの雑工事、東南海地震に備えた耐震補強工事が含まれる。このうち漆の塗り替えは通常、1社の協力企業が担うが、規模が大きいことや技術力を生かすために3社体制で臨む。
 24年度末の進捗(しんちょく)率は約30%。当初の工期は28年8月31日までだったが、25年度に耐震補強工事と天井絵保存修理工事が加わったことから工期は延長する可能性がある。
 清水建設の落合一真作業所長は、新たな工事が加わったことを踏まえ、「各工種の工程や工区の割り振りを工夫し、一日も早い完成を目指す。品質と安全の両面でご満足いただけるよう、無事故無災害で工事を進めたい」と意気込みを語った。