連載・地域建設業はいま 若手経営者のやりがい(中) | 建設通信新聞Digital

8月25日 月曜日

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連載・地域建設業はいま 若手経営者のやりがい(中)

地域維持へ地域外からの採用に力を入れる
【雇用に強い地域性/内と外の“縁”をてんびんに】
 「退職は非常にデリケートな問題」との認識は、大陽開発の荒木克社長、巴山組の猪俣一成社長、中越興業の細川一彦社長の間で一致する。
 都市部よりも人と人のつながりが強い地方部では、個人、法人を問わず、地元情報の伝聞が早い。退職情報もしかりで、それがネガティブに捉えられれば、いやが応でも個社と経営者に目が向けられる。退職者と引き続き生活圏を共にし、関係性が完全に途切れるわけでないことを含め、“事後の近所付き合い”が問題認識の根幹にある。
 採用面でも地域特有の事情が存在する。同級生のよしみや、付き合いが深い住民からの親類縁者・知人の推薦などがそれに当たる。地域の人間関係が濃いが故に、繊細な対応が求められ、「スキルを含めて現在必要とする人材なのか」「不採用時に地域内でどういった影響(見られ方)が出るか」などを考慮しなければならない。
 一方、企業理念や姿勢に共感して応募してきた新卒学生とてんびんにかけなければならないケースもあり、売り手市場の現状下で、「ここを逃すと次いつ採用できるか」といった不安が脳裏をよぎる。
 受注産業という建設業の特性上、将来の売り上げが見通しづらいことに加え、物価高騰を背景とした事業量の実質的な目減り、担い手対策に伴う働き方改革、生産性向上、賃上げへの投資などで経営環境は厳しさを増す。余剰人員を抱えるだけの余裕がない中、「地域内の縁」と「地域外の縁」のどちらを選択するか難しい決断を迫られる。
 雇用の一面だけを見ても、地域建設業と地域の結び付きの強さがうかがえる。社会インフラの整備・維持管理、災害対応を通して、社会経済活動と安心・安全を支えてきた歴史は、意図せずとも地域経営との関わりを深くしていったと言える。
 地方部の大半が人口減少に歯止めが掛からず、地域維持に苦慮している。企業経営と地域の自立的・持続的発展に向き合う3人の若手経営者は今、何をやりがいとするのか。「次世代のために未来をつくっていくことが大きなやりがい」(猪俣社長)、「生き生きと働く社員を一生をかけて守り抜く」(細川社長)ことを糧とする一方、「常に危機感しかなく、やりがいと言われてもよく分からない」(荒木社長)といった戸惑いも聞かれる。

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