連載・全建ブロック会議総括/つかめ上昇気流(中) | 建設通信新聞Digital

11月6日 木曜日

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連載・全建ブロック会議総括/つかめ上昇気流(中)

【高まる上限規制緩和の声/もうかる魅力的な産業へ】
 2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の罰則付き上限規制を巡り、関東甲信越地方建設業協会長会は「建設業は一品受注生産で、地理的条件、工種、工期といった受注内容によって繁忙期が左右され、現地屋外生産として日々刻々と変化する気象条件、予測できない猛暑や降雨・降雪に対処する必要があり、労働者には臨機応変な働き方が常に求められる。働き方自体が製造業などの他産業と全く違う状況下において、上限規制の内容が製造業などと同様では、対応が難しいことは明らかだ」と指摘した。
 また、しばしば労働行政側などから活用提案が上がる変形時間労働制についても、計画的な労働ができるシフト制の職種などには適しているが、工事受注の不確実性を抱え、自然対応で柔軟な働き方が必要な建設業には、不向きな制度との認識を示した。
 その上で、業界の実態に即して、働けるときに働くことができる労働環境整備の必要性を訴え、具体策として「年720時間」「月45時間超は6カ月まで」という上限規制の2条件の緩和を要望した。
 「働けるときに」という切実な思いの高まりは、近年の異常と言える猛暑への対応も背景にある。東海四県建設業協会は、6月に熱中症対策が強化された改正労働安全衛生規則に沿う場合の試算を披露。猛暑下では長めの休憩時間が必要となり、結果として1日の労働時間が4時間程度に限られ、標準日当たり施工量が著しく低下すると訴えた。これは、冬季の降雪地域も同様に抱える課題だ。効率低下に伴う工期延長や経費増がすんなり認められれば何の問題もないが、現実はそう甘くない。
 折しも新内閣の発足後早々に、高市早苗首相は、時間外労働規制の緩和を検討するよう厚生労働相に指示した。もちろん建設業に限ったものではないが、「人手不足なのに働けない」といったジレンマを抱える業界にとって、有益な見直しとなるか。今後の議論の行方が注目される。
 また、この数年、官民を挙げて取り組んできた建設現場の働き方改革の主要施策であり、着実に定着してきた週休2日の在り方も変わろうとしている。
 国交省直轄工事は、全国的に土日閉所の完全週休2日や月単位の週休2日を推進してきたが、業界の意見なども踏まえ、一部見直しを加える見込みだ。本省幹部は「完全週休2日の旗を降ろすことはしないが、季節や地域の実情に応じて柔軟に対応できるようにしたい」「最新の知見、技術を総動員した多様な働き方の支援などによって、他産業と遜色のない労働環境を目指す」と話す。
 一方、週休2日を巡っては、「技能労働者の月給制を実現しないと成し得ない。設計労務単価も月給制の週休2日仕様で設定すべきだ」などといった業界の意見も根強い。「そもそも、われわれが受注の柱とする市町村発注工事では週休2日が圧倒的に少ない」と直轄との温度差を指摘する声も漏れる。
 自民党の見坂茂範参院議員は、歩掛かりや必要経費などを含めた総合的な猛暑対策、月単位の週休2日の見直し、小規模工事用の歩掛かり作成などの検討を国交省に要請したと業界に伝えた。もうかる産業、若者にとって魅力的な業界となるための「質」の改善も急務だ。