人的資源の能力最大化/重層構造のボトルネック探る/国交省勉強会 | 建設通信新聞Digital

11月7日 金曜日

行政

人的資源の能力最大化/重層構造のボトルネック探る/国交省勉強会

 建設業政策の今後の方向性を話し合う国土交通省の有識者勉強会は、経営面から見た建設企業の人的資源の在り方に関する議論を始めた。人口減少・少子高齢化が進行し、産業全体での人材獲得競争が激化の一途をたどる中、新たな担い手の確保にとどまらず、現在従事している人材の教育や配置・人事制度、マネジメントのあるべき姿を探り、現有戦力の最大化を目指す。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)といった先端技術の活用が当たり前になっている業界の将来像を示す取り組みなどを通じて、建設工学系学生以外の関心を引いて入職を促すなど、担い手のターゲット層の拡大も図る。今回のテーマでは、重層下請け構造の行方も論点の一つとなる。 5日に「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」の第4回会合を開いた。人的資源に焦点を当てた議論は、次回の第5回まで続く。
 会議は冒頭を除き非公開で実施。開会に当たり、楠田幹人不動産・建設経済局長は「賃上げなどの処遇改善、働き方改革、生産性向上の取り組みを引き続き進めることが必要だが、高齢化や労働人口の減少がますます進んでいく状況下で、建設業を持続可能なものとするためには、今現在建設業で働いている方々に最大限活躍してもらえる職場づくりや、未来の担い手が働きたいと思える職場づくりに向けて、人材の確保だけでなく、その教育、配置、就労環境整備などに関してどのような取り組みを行っていくべきか。その議論を深めることが重要だと考えている」と狙いを語った=写真。
 続けて「建設業においては、工事の専門化・分業化や、年間を通じた業務量の繁閑差といった特徴を背景に重層下請け構造が形成されており、それが人的資源の能力発揮を困難にしている側面も否定できない。また、女性や若者に選ばれる業界・企業の在り方を考えるに当たっては、DXの進展やAIなど新たな技術の普及を前提に、今後どのようなスキルを持つ人材が求められるかなども検討する必要がある」との認識を示した。
 勉強会では技術者、技能者などの別を問わず、これからの建設業を支える人的資源の在り方を全体的に検討する。
 現在の重層下請け構造は、繁閑調整や工事の専業化の流れなどに対応するため、ある意味なるべくして築かれてきた側面がある。余分な経費がかかったり、責任の所在が曖昧になったりする過度な重層化は避けるべきだが、一概に否定できない合理的な生産システムという見方も少なくない。
 ただ、これからは人手不足が一層深刻化し、閑散期という状態の存在自体が、業界全体にとって非常にもったいないものとなる。重層構造が人的資源の効率的活用を阻害し、閑散期を生み出しているのであれば、障壁は取り除かなければならない。地域性や季節性なども考慮しながら、元下間や多種多様な職種がある下下間など、縦・横などの多面的な視点からあるべき形を探ることになりそうだ。労働者にとっての売り手市場が固定化する中、企業として「人を抱えることの意味」も見つめ直す局面に来ている。
 さらに、若者や女性のほか、これまで建設業に縁遠かった分野の人材からも選ばれる産業を目指し、門戸を最大限広げる必要がある。企業としてDXなどに取り組み、実践の場を現実に用意することはもちろん、業界として多様な人材それぞれの活躍シーンを描き、対外的にPRすることも求められそうだ。
 勉強会は2026年3月までに計7回の開催を予定している。