そこが聞きたい・東鉄工業専務執行役員土木本部長兼DX推進室副室長 相沢 文也氏 | 建設通信新聞Digital

11月27日 木曜日

インタビュー

そこが聞きたい・東鉄工業専務執行役員土木本部長兼DX推進室副室長 相沢 文也氏

【本部の取り組み方針は?/技術開発と人材確保注力】

 東鉄工業の相沢文也専務執行役員土木本部長兼DX推進室副室長は、同社の中核事業の一つである土木本部のかじ取り役を担うだけに「鉄道構造物を中心としたインフラの維持管理・補修、改良工事を通じて、それらを次世代に引き継ぐ」と使命を語る。同社発展の中心的な役割を果たすべく、「技術開発と人手不足への対応に力を入れる」と意気込む相沢専務執行役員に、同本部の取り組み方針を聞いた。 鉄道市場はコロナ禍から顧客もほぼ戻り、好調な状況が続くという。長期的に見ると、生産年齢人口の減少に伴い地方部を中心に顧客の減少を見込む一方、「首都圏、都市間輸送は今後も需要があるのではないか」とみる。
 JR東日本が管轄するエリアを主軸に事業を展開する中で、トンネルや橋梁の修繕が増えるほか、東北、上越新幹線の大規模改修を控える。旅客対応では、在来線や新幹線のホームドアの工事が進む。線路上空の橋梁の補修・補強、架け替え、撤去についても、「これまでの実績を生かして受注活動していく」構えだ。
 また、民鉄事業に携わるほか、「鉄道以外の受注のチャンネルを持たなければいけない」との考えから、橋脚、上下水道整備、農政関係工事といった公共工事にも継続的に取り組む。
 注力する取り組みの一つである技術開発は、「安全・工期・品質の確保、コスト低減のため、新しい工法を採り入れて施工の効率化を図る」とし、現場を省人化するだけでなく、建設技能者の負担軽減に寄与する機械化施工を積極的に導入する。機械化技術は、「線路や橋梁、トンネルのほか、のり面などの斜面、ホームといった狭い場所、高所など、施工条件が場所によって変化する箇所への適用にも挑戦する」と意気込む。
 将来に渡って人材を確保するため、協力会社では海外人材の採用も進むが、「線路内で作業するハードルは高い」との認識を示す。例えば、JR東日本は海外鉄道技術協力協会などと連携して「特定技能人材育成研修」を展開し、鉄道分野の特定技能人材の育成を本格化している。それにならい、「土木分野でも、建設職種として入職する人材向けに、鉄道分野の施工のルールや特徴を理解できる仕組みづくりや、教育の面で協力会社をサポートする」とし、海外人材の受け入れ体制を整備していく。
 災害対応では、技術開発だけでなく、これまでの経験を生かしたマニュアル化などに取り組む。「首都圏直下型地震といった大規模な災害を見据え、パートナー企業を含めてJR東日本管内以外のエリアも考慮した災害対応体制を敷くことも視野に入れる」と明かす。短期的な集中豪雨だけでなく線状降水帯の発生も念頭に置き、「水害対策はこれまで以上にレベルを上げなければならない」との考えを示す。

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 (あいざわ・ふみなり)1989年3月武蔵工大(現東京都市大)大学院工学研究科修了後、同年4月JR東日本入社。2015年1月鉄道事業本部設備部次長、18年7月建設塗装工業(現J-BISメンテナンス)社長などを経て、25年6月から現職。鉄道構造物の保守・維持管理、鉄道防災にハード・ソフトの両面から長く携わってきた。先走らずに受け止め、内容を議論した上で前進していく意味を持つ「後の先」を心に留める。趣味は体を動かすこと。東京都出身。64年7月7日生まれ、61歳。