【“必要な無駄”への投資重要/デジタルツールを積極活用/山下設計 藤田秀夫(ふじた・ひでお)社長】
工事費高騰と人材不足が顕著な建設業界では、業務の効率化が不可欠だ。そうした中で、山下設計の藤田秀夫社長は「“無駄”を“必要な無駄”に変えることが重要だ」と提起する。
インターネット一つあればありとあらゆる情報にアクセスし、“知る”ことができる現代、「AI(人工知能)の普及によってわれわれが手にできる情報量は増えている。しかし、それらの情報を知るだけでは、人間の創造性を育むことは難しい」と実感を込める。
創造性を育むためには「直接的に価値を生まない、一見無駄とも思えることを大切にする必要性がある」という。特に設計者には「本物を見る」ことが求められる。建築を例に挙げると「その場に行かなければ感じ取れない空気や匂いがある。実際に本物を見た人とそうでない人の間には、創造性に大きな差が生まれる」と指摘する。
「雑談」の重要性も強調し、「クライアントが何を求めているのか、言葉として表に出てこない要求をくみ取り、期待以上の提案をする。さらには、丁寧に説明して納得していただく」と語る。
そのために求められるコミュニケーション力を磨くには「“リアル”な経験を重ねる以外に方法はない。コミュニケーション力は人と人をつなぎ、情報と情報をつなぎ、やがて組織力の要となる。だからこそ、本物を見る時間や雑談する時間を会社として“必要な無駄”と捉え、投資することが大切だ」と力を込める。
必要な無駄を大切にしながら、省く必要のある無駄には徹底的に向き合う。建設費高騰や人手不足が進む今、不可欠な考え方だ。そのため同社では、AIやBIMなどのデジタルツールを積極的に活用して時間を生み、必要な無駄を守り育てる環境整備に取り組んでいる。
AIに関しては、所員500人のうち約半数が日常的にAIソフトを使用している。先進的活用の促進と利用者層の拡大という二段構えでさらなる普及を目指しており、先進的な取り組みとしては、社内に蓄積されたデータを活用する独自アプリケーションの開発や、ミニアプリケーションの開発が進む。利用者層の拡大に当たっては、データを蓄積・分析し、デジタル分野に苦手意識を持つ人でも取り組みやすい活用事例や使い方の情報を届ける。
これにより一人ひとりの取り組みを少しずつ増やし、「利用を促していきたい」と意欲を示す。
コストや環境、デジタル化と、要求される事柄が増え続けている今だからこそ、「従来の技術力に加え、膨大な情報から高い精度で情報を読み取る判断力とコミュニケーションをベースとした組織力が重要になる」。個々の能力と時間を無駄なく生かし、「良い建物を“創る”」という原点に立ち返り、クライアントと設計者、施工者、関係する皆が一つになって、「より良い社会につながる建築をつくりたい」と思いを新たにする。
【業績メモ】
2025年9月期の業績は、売上高、受注高ともに「好調」だ。庁舎・学校を中心に、幅広い用途で受注を獲得できている。現在の官民比率は6対4程度だが、近年、官の比率が高まりつつあるという。今後は「民間の設備投資が激減していることもあり、官庁業務の競争が激化していく」とみる。
工事費高騰と人材不足が顕著な建設業界では、業務の効率化が不可欠だ。そうした中で、山下設計の藤田秀夫社長は「“無駄”を“必要な無駄”に変えることが重要だ」と提起する。
インターネット一つあればありとあらゆる情報にアクセスし、“知る”ことができる現代、「AI(人工知能)の普及によってわれわれが手にできる情報量は増えている。しかし、それらの情報を知るだけでは、人間の創造性を育むことは難しい」と実感を込める。
創造性を育むためには「直接的に価値を生まない、一見無駄とも思えることを大切にする必要性がある」という。特に設計者には「本物を見る」ことが求められる。建築を例に挙げると「その場に行かなければ感じ取れない空気や匂いがある。実際に本物を見た人とそうでない人の間には、創造性に大きな差が生まれる」と指摘する。
「雑談」の重要性も強調し、「クライアントが何を求めているのか、言葉として表に出てこない要求をくみ取り、期待以上の提案をする。さらには、丁寧に説明して納得していただく」と語る。
そのために求められるコミュニケーション力を磨くには「“リアル”な経験を重ねる以外に方法はない。コミュニケーション力は人と人をつなぎ、情報と情報をつなぎ、やがて組織力の要となる。だからこそ、本物を見る時間や雑談する時間を会社として“必要な無駄”と捉え、投資することが大切だ」と力を込める。
必要な無駄を大切にしながら、省く必要のある無駄には徹底的に向き合う。建設費高騰や人手不足が進む今、不可欠な考え方だ。そのため同社では、AIやBIMなどのデジタルツールを積極的に活用して時間を生み、必要な無駄を守り育てる環境整備に取り組んでいる。
AIに関しては、所員500人のうち約半数が日常的にAIソフトを使用している。先進的活用の促進と利用者層の拡大という二段構えでさらなる普及を目指しており、先進的な取り組みとしては、社内に蓄積されたデータを活用する独自アプリケーションの開発や、ミニアプリケーションの開発が進む。利用者層の拡大に当たっては、データを蓄積・分析し、デジタル分野に苦手意識を持つ人でも取り組みやすい活用事例や使い方の情報を届ける。
これにより一人ひとりの取り組みを少しずつ増やし、「利用を促していきたい」と意欲を示す。
コストや環境、デジタル化と、要求される事柄が増え続けている今だからこそ、「従来の技術力に加え、膨大な情報から高い精度で情報を読み取る判断力とコミュニケーションをベースとした組織力が重要になる」。個々の能力と時間を無駄なく生かし、「良い建物を“創る”」という原点に立ち返り、クライアントと設計者、施工者、関係する皆が一つになって、「より良い社会につながる建築をつくりたい」と思いを新たにする。
【業績メモ】
2025年9月期の業績は、売上高、受注高ともに「好調」だ。庁舎・学校を中心に、幅広い用途で受注を獲得できている。現在の官民比率は6対4程度だが、近年、官の比率が高まりつつあるという。今後は「民間の設備投資が激減していることもあり、官庁業務の競争が激化していく」とみる。













