国土交通省は、経営事項審査制度など建設企業に対する評価制度の見直しを視野に入れた議論を始めた。処遇改善や生産性向上に取り組む企業が市場で選ばれるようにするため、新たな評価項目や制度の活用を促す方策を検討する。建設企業・団体や発注者などに意見を聞き、まずは企業評価に関する現行制度を検証する。2026年度内に今後の評価制度の在り方に関する方向性をまとめる。
「持続的な成長産業としての建設業のあり方に関する検討会」の下に設置した「企業評価WG(ワーキンググループ)」(座長・蟹澤宏剛芝浦工大建築学部教授)の初会合を17日に開いた=写真。蟹澤座長は「しっかりした企業を評価して競争上不利にならないようにすることは積年の課題だ。活発に議論して良い結論を導きたい」と述べた。
WGでは成長産業としての建設業の実現に向け、企業評価の観点から必要な仕組みを議論する。処遇改善などに取り組む企業が建設・労働市場で評価される環境の構築を目指す。WGでは制度の詳細は作りこまず、論点整理として望ましい評価の方向性を示す。
検証する現行制度は、▽経営事項審査制度▽専門工事企業の施工能力等の見える化評価制度▽建設業許可--の三つ。各制度の特性を踏まえ課題や改善点を洗い出す。事業者の賃金支払いを評価するため検討している処遇優良事業者証のように項目を絞った評価方法も参考にする。
検証に当たり、建設企業・団体や民間発注者、地方自治体、労働市場や教育分野の関係者に意見を聞き、制度の課題や企業評価に対するニーズを把握する。取引先や就職先を選定する際のポイントも調べる。
会合では各委員が現行制度に対する意見を表明。外国人雇用に詳しい杉田昌平弁護士は、建設業で働く外国人材の多くは専門工事企業が技能者として雇用している点に触れ、「国際労働市場での評価や外国人の担い手確保に取り組む場合、経審でできることには限界がある」と言及した。
日本政策投資銀行の鈴木章弘都市開発部長は、環境対策や人的資本など業績以外の非財務情報に対する評価は「企業やステークホルダーにもポジティブなものだ」と説明。また、「同じ物差しで(建設業許可事業者の)48万社を見える化できる制度があるといいのでは」と提言した。
検討会でも委員を務める福地宏之一橋大大学院経営管理研究科准教授は、普及している経審をてこに評価の在り方を見直すべきと主張。供給網の健全化や生産性投資を促す評価があり得るとした。
公認会計士の中川政人氏は、「工事の適正な施工」「建設業の持続性」の二つを考慮する場合、「(経審のX、Y、Z、Wの)4要素を合計して点数化することに限界がきている」と投げ掛け、一定規模以下の企業は非財務情報を重点化して評価する仕組みを提案した。
蟹澤座長は、同じ元請企業でも現場ごとに専門工事企業からの評価が異なるとし、大手企業が受注する大規模工事は、発注者への開示も念頭に、プロジェクト単位の評価も考えられるとした。
