能登半島地震リポート・生きた広報/道路啓開 最前線に光 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

行政

能登半島地震リポート・生きた広報/道路啓開 最前線に光

道路復旧見える化マップでは啓開済みの区間や作業の写真などが確認できる
【社会的理解へ建設業の姿紹介/国交省 HP、SNSで連日発信】
 「令和6年能登半島地震」では斜面崩落などによって大動脈の国道249号をはじめ、多くの道路が寸断した。地域の守り手である建設会社は発災直後から緊急復旧に当たり、今もなお作業が続いている。被害の全容が見えない厳しい状況にありながら最前線の活動に何とか光を当てようと、国土交通省はホームページ(HP)やSNS(交流サイト)で道路啓開作業の写真や動画を連日発信している。復旧・支援活動の参考になる情報のみならず、一般にはまだ十分に知られていない災害対応に当たる建設業の姿を広く知らせている。 =関連8面 「現地での奮闘が世の中にあまり伝わっていないのではないか」。地震発生後、道路局企画課評価室の本田卓企画専門官は危機感を抱いていた。半島という地理的条件によって甚大な被害を受けた北端部にアクセスする道路は限られ、その道路の多くも陥没や土砂崩れで通行できない状態となった。加えて、多数の家屋倒壊や上下水道の損傷、停電、孤立集落の発生。被害の全容把握が難航する中、建設業が緊急対応に汗を流していることも社会に知られず埋没しそうになっていた。
 普段から道路局で広報を手掛ける評価室は事態を打開するため、1月8日に道路啓開の作業状況を伝える特設ページの立ち上げを決め、 翌9日に国交省HP内に開設した。本田氏は 「報道が入れない現場も多かったので、何が起きているのかをプッシュ型で伝えたかった」と狙いを明かす。
 特設ページでは、主要幹線道路の緊急復旧の進捗(しんちょく)率や走行可能な道路といった情報に加え、担当する建設会社を明記しながら各路線の啓開状況を作業前後の写真とともに逐次紹介している。過酷な環境下での懸命な作業が伝わるよう、降雪時や夜間の写真もあえて取り上げた。北陸地方整備局がX(旧ツイッター)で発信する被災状況調査や道路啓開の映像と写真も掲載し、作業の実態をさまざまな角度から伝えている。その背景には「建設会社だけでなく国交省職員にとっても厳しい環境での活動が評価されれば、やりがいや誇り、責任につながる」(本田氏)という強い思いがある。
 復旧活動や支援活動に役立ててもらうため、1月12日からは「道路復旧見える化マップ」の公開を始めた。被災箇所のほか、国交省、石川県、自衛隊が担当した啓開済み区間を色分けして地図上に表示できる。金沢市や七尾市から北端市町への所要時間も分かり、ここでも啓開作業の写真や動画が閲覧できる。
 マップ制作は評価室の金森宗一郎官民連携係長が手掛けた。 国土地理院が公開しているウェブ地図の作成ツールなどを使って内製したという。啓開作業の進捗とともに掲載データは徐々に増加。 崩落斜面をドローンで空撮した360度画像やその点群データ、GIS (地理情報システム)データなども確認できる。
 災害対応は緊急復旧から次の段階へと移行しつつあり、復旧・支援活動の本格化に伴う多数のボランティアなどの現地入りが見込まれることから、マップの情報もそれに合わせて一層充実させた。道の駅に関する情報もその一つ。営業状況やトイレの利用可否などが把握できるようになっている。
 手探りながら始まった情報発信は、発災から2カ月が経過した現在も被災地の現状を日々伝え続けている。本田氏は「今後はこうした取り組みが標準となれば発災直後からより意識的に対応できるようになる。現地の状況が分かれば、(災害対応への)社会的な理解にもつながる」と見据える。