連載・能登半島地震リポート/生きた広報 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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連載・能登半島地震リポート/生きた広報

地域建設業の奮闘をXに投稿
広報班として活動する渡邊班員(左奥)
【支援、復旧活動に反響/被災者や親族の安心感に/感謝の声がモチベーション】
 北陸地方整備局がSNS(交流サイト)を通じて発信する、建設産業やTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)の支援・復旧活動に反響が寄せられている。作業進捗(しんちょく)が生活再建に直結する被災者だけでなく、遠方で暮らすその親族への安心感にもつながっているようで、災害対策本部広報班の渡邊貴子班員は「(国民の安全・安心を守るという使命が)正しく理解され、関係者のモチベーションになっている。広報の重要性を肌で感じている」と話す。 =1面参照
 同局では、発信力をより一層高めるため、2022年12月に情報発信ツールとして広く浸透しているツイッター(現X)の運用を開始。広報の主軸であるプレスリリースを補完する役割も担っている。
 初ツイート(投稿)となった大雪への注意喚起ではフォロワー数が増加し、「有事に対する関心の高さがうかがえた」(渡邊班員)ことから、今回の震災では手軽さと拡散性を生かして、さまざまな情報をこまめに発信している。その数は400本を超え、事務所が実施しているものを合わせると倍以上に上る。
 特に「実際の現場で活動する人たちの頑張りが伝わる内容を心掛けている」という。
 例えば、大手企業や自らも被災している地元企業が24時間態勢で作業を進める道路啓開では、閲覧したユーザーに団体・企業名を認識してもらえるような写真、動画を投稿している。
 TEC-FORCEは、被災状況の調査のほか、給水車による応急給水や照明車を使った停電施設の電力供給など、生活に密着した支援にもスポットを当てている。
 こうした奮闘は被災地の住民、離れた場所で一日も早い日常生活の回復を願う親族の不安を和らげており、「(建設業や国土交通省が)頑張っていることを初めて知った。ありがとう」「心強いです、安心しました」といったコメントが届く。「感謝の声は何よりも現場の力になる」とともに、「広報を担当してよかった」と思える瞬間だ。
 一方、課題も存在する。現場写真はそもそも被災箇所や作業進捗を主体とするため、広報向きの構図になっていないケースが多い。「われわれ(広報班)がTEC-FORCEの道路、河川、砂防、港湾などの調査班に広報用の写真をお願いすれば、撮影してきてくれると思うが、現場の過酷さを知っているだけにためらってしまう」ことがある。
 そこで、広報班には「どういった写真や動画だと作業内容が伝わりやすいかを事前に明確化(明文化)することが求められている」との考えを示す。
 インプレッション・エンゲージメント数が多かった道路の通行状況や道路啓開情報、住宅リフォームの事業者情報などを含め、「工夫を重ねながら、多くの人にとって有益な情報を発信していきたい」と、地道な広報活動は今後も続く。