沓掛敏夫国土交通省技術審議官に聞く i-Con2.0のコア技術に

沓掛氏
全国で地震、台風などの大規模災害が起きる中、建設業は地域の守り手として、あるいはインフラを維持管理する担い手として、重要な役割を果たしています。一方で深刻化する人手不足に対応するため、現場の生産性向上は至上命題です。そのため、国土交通省は少なくとも3割の省人化すなわち1.5倍の生産性向上を目指すi-Construction2.0を打ち出しました。
“建設現場のオートメーション化”を目標に、トップランナー施策として「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化(デジタル化・ペーパーレス化)」「施工管理のオートメーション化(リモート化・オフサイト化)」の三本柱で進めています。
BIM/CIMはデータ連携のオートメーション化に関するコア技術に位置付けられ、建設生産プロセス全体のデジタル化や3次元化、各種データの高度利用を進め、生産性の劇的な改善につながることが期待されています。
――原則適用2年目の方針は
国交省は、23年度を“BIM/CIM元年”として直轄土木の業務・工事に原則適用しました。3次元モデルは視覚的に分かりやすいため、合意形成などに効果がありました。BIM/CIMは建設生産システム全体に影響を与えるため、24年度は仕事のやり方を変えるところにフォーカスしています。
業務では、設計者は2次元で設計し、最後に3次元モデルを作成することが多いのですが、それではBIM/CIM本来の力を発揮できません。3次元で設計したモデルから2次元図面を切り出す取り組みを今年度に試行します。主要構造物から順次導入し、3年-5年をかけて標準化したいと考えています。
また、3次元データの属性情報を積算や設計変更に直接活用することで同じデータを何度も入力する手間をなくし、業務を効率化することができます。BIM/CIM積算を行うために必要な工事工種体系ツリーコード等を公開してきたところであり、今年度はBIM/CIM積算の試行を予定しています。
施工でのBIM/CIMも進んでおり、AR(拡張現実)で3次元モデルを現場に投影したり、出来形検査に活用するなどさまざまな取り組みが進められています。受発注者がメリットを最大限に享受できるようマニュアルを柔軟に見直し、一丸となって生産性向上に取り組みたいと思います。
――BIM/CIMの今後の展望は
昨年度はデータ入力の手間やソフトへの投資などで負担を感じることもあったと思いますが、継続して活用すればミスが減り、コストダウンを実現し、メリットを享受できると思います。一度山を越えれば生産性向上を追究できるようになるでしょう。
また、国際標準規格であるIFCが4.3に更新され、道路や橋梁などのインフラ分野に拡大しました。ソフトウエアがIFC4.3に対応すればソフト間のデータ連携が円滑化します。みんなが同じ方向を向いて進めるよう、国交省としても今後の動向を注視していきます。
建設業をやりがいのある産業にするには、学校の授業などにBIM/CIMなど最新のテクノロジーを取り入れることも重要です。BIM/CIMを介することで、ベテラン技術者が持つ豊富な知識や経験が、新技術の得意な若手に継承され、建設業界全体の力を高めることを期待しています。