鹿島は、タワークレーンの遠隔操作システム「TawaRemo(タワリモ)」をダム工事に初導入するとともに、タワークレーンの「自動運転システム」と車両運行管理システム「スマートG-Safe」を組み合わせることで、従来と比較して現場作業の生産性を約20%向上させた。今後は、橋梁工事などダム以外の工事にも展開できるよう技術検討を進めるほか、将来的には複数台のクレーンを1人のオペレーターが遠隔地から運転できるシステムの実現を目指す。
導入したのは、秋田県東成瀬村で施工中の成瀬ダム堤体打設工事で、台形CSG(セメント、石、砂れき混合材)ダムとしては日本最大級の大きさとなる。
ダム工事は施工エリアが広く、オペレーターがタワークレーン上の運転席に移動するのは時間がかかる上、一度運転席に入るとそこからの移動が容易ではないため、作業開始から終了まで終日運転席で過ごす必要があった。
この課題を解決すべくタワリモを導入。地上に設置した専用コックピットから遠隔操作が可能なシステムで、風や荷運びで生じる細かな振動も感じられるなど、従来のタワークレーンの運転席と同等の作業・操作環境のまま、オペレーターの移動時間を1日当たり65分短縮した。クレーン稼働時間も約16%向上した。
自動運転システムは、最適な運搬ルートを記憶させ、それを再現できる「ティーチングプレーバック方式」を使用しており、人が運転する場合と比べ、習熟度や身体的疲労度、霧による視界不良などの作業条件に左右されることなく、長時間連続での繰り返し作業が可能だ。
1回当たりの作業時間は従来と比べて平均約30秒短縮し、コンクリートの平均打設速度が約5%向上した。自動運転中、オペレーターはクレーン操作から解放されるため、作業状況の監視に集中でき、安全性も高まった。
工事用車両や通行人の安全管理・運行管理がリアルタイムでできるスマートG-Safeをタワークレーン本体に搭載することで、作業時の吊り荷直下の立ち入り禁止エリアと、タワークレーンのブームや技能者などの位置の干渉状況を、オペレーターはコックピットに設置した画面、技能者はスマートフォンで確認でき、安全性が向上した。
三つのシステムの導入で、労働環境の改善や安全な作業環境の構築だけでなく、タイムロスの削減やサイクルタイムの安定、打設速度の均一化を実現した。