次のステップは「openBIM」
「BIMの次のステップ」と題して、日本のBIM導入企業が進むべき道筋をわかりやすく解説するのは、今年8月に日本法人を開設したBIMプラットフォームベンダーのカテンダ(本社・ノルウェー)でマーケティングマネージャーを務める平野雅之氏だ。10月末に開かれたBIMイベント「Archi Future2024」の同社テクニカルセッションで、会場を埋め尽くす来場者を前に「BIMの中にある情報を有効活用するための最適解を見つけてほしい」と呼び掛けた。BIM導入企業はどこに向かうべきか。平野氏のセッションをまとめた。

平野氏
平野氏は「BIMはデータベースであり、その中にある情報を関係者同士でシェアすることが本来のBIMの姿」と定義する。大手のゼネコンや設計事務所が社を挙げてBIM導入に舵を切り、中小規模の企業にも導入の流れが広がろうとしている。「どの企業も導入当初はモデル作成に注力し、次にはモデルの中に情報を蓄積する段階に入り、そして情報を円滑に使うためのプロセス構築を進める」とBIM導入のステップを説明する。
プロセス構築の理由は「プロジェクト関係者で共同作業を進める」ためであり、それには「標準化された枠組みに基づいて、プロセスを整えることが何よりも重要」と強調する。つまり、BIMの国際規格ISO19650に準拠したプロセスを基盤にデータの流れ方を組むことが「日本でも注目されるようになったopenBIMの考え方」と訴える。
プロジェクト関係者は多岐にわたる。特定のソフトに限定することで情報共有は閉ざされ、そのデータ形式に合わせるための手間も時間も発生してしまう。各ソフトのデータを中間ファイル形式のIFCデータに統一することで、誰もが円滑につながることのできるオープンな環境が実現する。「それがCDE(共通データ環境)であり、それによって関係者がデータをリアルタイムに共有するBIMコミュニケーションの場ができあがる」と強調する。
BIMを本格導入する企業では、担当者が複数のプロジェクトを同時並行で管理している。従来のように電子メールで各プロジェクトの関係者と連絡を取り合うことには限界がある。これまでのようにパソコンの中にあるデータをその都度、アップロードする情報共有の進め方も同様だ。1つのプラットフォーム上に関係者が自由にアクセスできることで、情報共有の円滑な流れが実現する。
大切なのは「常に正しい情報に対して関係者がストレスなく自由にアクセスできることであり、しかもその枠組みが国際標準に準拠した枠組みであることも重要なポイント」と訴える。欧州を中心に海外のBIMプロジェクトでは、CDEプラットフォームを基盤に関係者が情報を共有している。「BIMの中にある情報を円滑に管理するCDEの構築こそが、次のBIMのステップになる。まさにopenBIMの時代が到来しようとしている」
Catenda Hubは、日本国内の販売代理店として2023年からグローバルBIM(東京都港区)が自社のBIMコンサルティングに合わせて日本企業への提案を進めており、導入企業を急速に増やしている。既に全体の17%を日本企業が占めており、日本法人の設立によってさらなる導入拡大に弾みをつける。平野氏は「Catenda Hubがプロジェクト単位で契約することから、アクセスする関係者が何人であっても費用は変わらない。多くの関係者に体感してもらい、日本にopenBIMの流れを定着していきたい」と力を込める。