美保テクノス(鳥取県米子市)が、応用技術(大阪市)と連携してBIMのプロセス管理ツール『ConnecT.one ACCURATE』(oneAQ)を2025年度中にリリースする。oneAQはBIMの国際規格ISO19650を認証取得した美保テクノスが実践する設計プロセスの流れを見える化したもので、両社は建設会社や建築設計事務所へのBIM導入をトータル支援する体制も確立する方針だ。美保テクノスの野津健市社長、山内英樹常務建築本部長、新田唯史執行役員BIM戦略部長、応用技術の小西貴裕専務DX事業統括責任者にoneAQの狙いや両社の関係性について聞いた。
試行錯誤のプロセスを見える化/「ConnecT.one ACCURATE」は2025年度中にリリースへ
――oneAQのきっかけは
野津 美保テクノスは自社の新社屋プロジェクトやPFIの鳥取県西部総合事務所新棟・米子市役所糀町庁舎整備等事業でフルBIMに挑戦し、失敗を繰り返しながらBIMを学んできた。設計プロセスが曖昧であったため、施工部門からの不満もあり、設計・施工の強みが発揮できていなかった。
山内 当時の図面精度は胸を張れるものではなかった。担当者によって図面の書き方にばらつきがあり、施工目線から図面を見た場合、細かな部分の収まりも曖昧だった。設計担当には図面の書き方から指導し、設計者として何が足りていないかを理解させ、常に施工のことを意識して設計するマインドを植え付けてきた。
野津 23年2月に認証取得したISO19650により、設計プロセスが見える化でき、設計部門の正しい仕事の流れを明確化できた。着工前までに施工部門に成果物としての設計情報を受け渡す態勢が整った。その流れをシステムに落とし込み、プロセス管理ツールに展開したのがoneAQであり、社内では設計部門と施工部門の分断を取り除く役割を担う。BIMに取り組む建設会社だけでなく、建築設計事務所にも活用してもらいたい。
小西 応用技術が美保テクノスとBIMデータの利活用に向けたMOU(戦略的提携)を結んだのは3年前。BIMの導入に向けて美保テクノスが苦労した部分は、他の建設会社や設計事務所にとっての共通課題でもある。BIMに取り組む企業の多くはどう取り組めばいいか悩んでいる。oneAQはMOUの成果を形にしたものであり、両社が連携して中小企業のBIM導入を幅広く支援していきたい。
新田 設計段階でBIMデータをきちんと構築するための便利ツールがoneAQであり、プロトタイプで1年前から実プロジェクトに導入しながら最終の実証試験を進めている。BIM戦略部では設計担当から様々な要望を吸い上げ、より使いやすいツールとしてブラッシュアップしている。
山内 まだ完全なシステムではないが、設計担当からはこういう使い方ができるのではないか、などの提案も出ている。設計部門が設計プロセスの管理ツールとして有効に使いこなすことができれば、それが施工段階へのBIM導入に向けた大きな一歩にもなる。
――美保テクノスのBIMとは
野津 当社ではBIMの目的として「目立つ」「稼ぐ」「役に立つ」という3つのキーワードを掲げている。地域建設業の中でも先んじてBIMに取り組んできたことで一定の評価も得ており、何よりも応用技術との深い関係性も生まれた。これからはBIMによる収益化を目指し、建設業として本業である施工にも役に立てていく段階だと考えている。次のステップとして施工段階へのBIM導入を浸透させる上でも、現場にBIMの具体的な導入メリットをきちんと感じてもらわないと施工担当の賛同は得られない。
新田 BIMの目的がわかりやすく言語化されたことで、社員一人ひとりのベクトル合わせができている。ISO19650の取得によって質の高い設計を実現するためのプロセスも構築できた。次はそのデータを現場に浸透させるフェイズに入る。設計と施工をつなぐ役割としてBIM戦略部のあり方も進化させていく。
山内 施工部門からBIMへの理解を示す声も出始めている。現場担当からBIM戦略部に対して社内報で感謝のメッセージが掲載されたことは貴重な一歩だと受け止めている。こうしたBIMへの理解と前向きな意識の広がりが施工段階へのBIM導入の流れを押し上げていくだろう。
野津 BIMのメリットは企業規模に関わらず享受できる。われわれの試行錯誤を形にしたoneAQを発展させ、地域ゼネコンとしての等身大のBIMプラットフォームを示したい。
――両社の関係性は
小西 応用技術ではBIMのプラットフォーム化を柱に事業展開する。BIMの導入企業では以前の美保テクノスが苦労したように、同じような部分に悩み、それをどう克服していくべきかの課題を抱えている。プロセスの設定やデータ連携の進め方など共通課題の部分をシェアできるプラットフォームを提供し日本のBIM普及を後押したい。まさに美保テクノスのノウハウを詰め込んだoneAQは、その考え方に基づいたサービスになる。
野津 美保テクノスとのMOUにおいて導き出したベストプラクティスを形にしたのがoneAQである。当社にとって、応用技術は信頼できるパートナーであり、これからも二人三脚で取り組んでいきたい。応用技術のコンサルティングによってISO19650を取得できたことも感謝している。今後も両社の関係性をより強固にして、ともに成長していきたい。
新田 この1、2年で社内のBIMに対する意識が変わってきたように、顧客からもBIMをきっかけにした相談が舞い込むようになった。oneAQは設計プロセスの見える化を実現するBIM導入の支援ツールであるが、ツール単体では効果は出ない。われわれはoneAQを販売することだけが目的ではない。提供企業に対してBIM導入の道筋をしっかりと支援していく部分に注力していく。
小西 BIM導入はプロセスの見える化が重要になる。そのためには導入企業の中でBIMの目的をきちんと整理して取り組むことが求められるだけに、コンサルティングとセットにした販売展開を軸にしていく。今回のoneAQ開発は美保テクノスが中心になり、当社が技術支援する枠組みで進めている。今後の両社の連携ではシステム開発の部分でもお互いの力を出し合っていきたい。
山内 社内では設計や施工の両部門に加え、BIM戦略部のBIMスキルも着実に育っている。oneAQの開発をきっかけに、当社のシステム開発力も大きく向上した。応用技術とは、幅広い視点から二人三脚でお互いに成長していきたい。
野津 3年間進めてきたMOUの成果として2025年度中にoneAQを提供するが、その先も応用技術との連携は続いていく。当社としてもoneAQをきっかけに、施工、その先のFMまで見据え、BIMデータ活用の流れを整え、自ら実践していきたい。
美保テクノス自ら試験導入
美保テクノスでは、1年前からBIMプロセス管理ツール『ConnecT.one ACCURATE』(oneAQ)の検証を本格化してきた。過去のBIMプロジェクト3件を対象にした実証試験を完了し、現在はサービス付き高齢者向け住宅とオフィスの進行中プロジェクト2件に試験導入し、設計担当とシステム担当が連携しながら使い勝手などを調整中だ。2025年度中のリリースに向けて着々と準備が整っている。
同社が認証取得したISO19650に基づき構築した設計プロセスを見える化したoneAQは、応用技術が提供するクラウドサービス『ConnecT.one』を基盤にしたダッシュボードの上でプロジェクト関係者がリアルタイムに進捗を管理する情報共有ツールだ。
美保テクノスは社内のCDE(共通データ環境)を整えた上で、グループ会社のスペックが中心になり、応用技術が協力する形でoneAQのシステム開発を進めてきた。検証に着手したのは1年ほど前だ。実証プロジェクトの設計責任者を務める設計部の北野哲也係長は「設計者の役割は顧客の思いを形にすることであり、使い勝手だけでなく、設計業務の負担にならないようなアイデアも出している」と語る。oneAQ開発の責任者を務めるBIM戦略部の絹田裕輔主任は「私自身が設計部門に所属していた時の経験を生かし、設計情報を2次利用することで設計担当の負担を最小限に抑える仕組みを追求している」と続ける。両氏が「着工前までに施工のことを踏まえた質の高い設計成果を導き出すことが前提になる」と口をそろえるように、美保テクノスではBIMの設計プロセスを円滑に進める上で、独自の組織体制も確立している。
社内ではISO19650に基づいた設計プロセスに沿って業務を進める中で、BIMデータ構築の進捗を管理するタイムキーパー役「プロセスコントローラー」を位置づけ、設計担当の業務が期日通りに進んでいるかをチェックしている。設計前、設計中、設計後には施工部門長クラスからの意見を聞くレビューも組み込んでおり、設計者の目線が常に施工を意識するような枠組みになっている。oneAQは、その設計進捗を管理するツールになっている。
トライアルプロジェクトの初弾となるサービス付き高齢者向け住宅は設計が完了し、工事がスタートした。BIMデータは現場の生産性向上に役立てられるように、施工担当に引き継がれる。現場担当者のBIM活用スキルに応じて、BIM戦略部が支援する流れになり、1現場当たり1人の支援役を置いている。
BIMの進捗を管理するプロセスコントローラーは3人を任命。絹田氏もその1人だ。「oneAQはCDEを誰が見てもわかりやすい状態にするツールだけに、設計者だけでなく、顧客、協力業者にも参加してもらうことで、合意形成の面でも活用できる」と強調する。
oneAQの確立を通じて、新たな役割の道筋も出てきた。北野氏は「私自身、設計担当としてプロセスコントロールの部分も含めて横断的に取り組むBIMマネージャー的な存在を目指していきたい」と思いを口にする。絹田氏は「正確な建築情報を後工程に渡すことがBIMの本質であり、oneAQを検証する中で、新たなプロセスコントローラーの役割も確立していきたい」と前を向く。oneAQの検証を通じて担当者の意識も変わり始めている。