【BIM2022 SUGIKO×応用技術】現場で使える「足場モデル」 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

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【BIM2022 SUGIKO×応用技術】現場で使える「足場モデル」

 仮設機材レンタル専門会社の杉孝(横浜市、SUGIKO)が社を挙げて足場BIMの導入を推し進めている。この3年間で300件近くのプロジェクトで実績を積んだ。推進役の杉山亮取締役副社長執行役員、三宅祥子技術営業部デジタルサービス推進課課長と、同社のBIMコンサルティングを担う応用技術(大阪市)の船橋俊郎社長、木村征爾DX推進本部toBIMセールスチームマネージャ、野間口龍亮BIMプロセスチームリーダーの5人に、足場BIMの目指すべき方向性について語ってもらった。

--BIM導入のきっかけは

SUGIKO 杉山亮氏

 杉山 2次元図面をベースに進めている見積もりや搬入計画の立案をもっと合理的に進める方法はないかと思案する中でBIMに着目した。当時、ゼネコンからも足場計画でBIMモデルを提供できないかとの相談もあり、社を挙げて取り組むことを決めた。
 三宅 当初は社内向け数量算出のツールとして導入したことがきっかけとなり、CADで計画していた仮設計画をBIM化することでモデリングのノウハウを確立してきた。2019年から本格的に舵を切り、21年までの3年間で300件近くの実績がある。ただし現在、労働基準監督署に提出する足場設置届は2次元の図面でしか申請できないため、CADと並行してBIMに取り組んでいる。
 杉山 BIMにチャレンジした17年は大手ゼネコンからの依頼だけだったが、近年は準大手・中堅ゼネコン、さらには地場建設会社からも足場モデルの提供を求められるケースが出てきた。仮設計画へのBIM要求は今後さらに高まるだろう。

足場BIMは3年間で300件の実績

--応用技術との関係性は

SUGIKO 三宅祥子氏

 三宅 17年の初トライアル現場の施工者がBIMソフト『Revit』を使っていたため、当社もRevitで足場モデルを突き詰めようと動き出した。独自で取り組んできただけに、不安も多かった。Revit支援パッケージ『BooT・one』を提供する応用技術には、BIMコンサルの立場でさまざまな助言をもらっている。
 木村 両社の出会いは、ある大手ゼネコンからの紹介がきっかけになった。当社にBIMの足場ツールを開発してほしいと依頼される中で、SUGIKOが前向きにBIMに取り組んでいると紹介され、接点が生まれた。

 三宅 応用技術からは技術的なアドバイスももらっている。現場は動き出すと、計画の変更が頻繁に起きる。オートデスクの自動化プログラミングツール『Dynamo』を使ってファミリデータを一括変換するアイデアはとても役に立っている。Revitを使い、どう業務を効率化していくか、そのポイントを聞くことができている。
 木村 逆にわれわれもSUGIKOの貴重な知見からアドバイスをもらっている。BooT・oneの便利ツールとして仮設メニューを提供しており、SUGIKOの主力足場『アルバトロス』のファミリデータを提供してもらえたことは、当社にとってもBooT・oneユーザーのゼネコンにとっても大きい。

--足場モデル活用の方向性は
 杉山 当社の役割は現場の安全と効率化を追求することであり、製品の品質だけでなく、迅速に現場へ機材を供給できるデリバリー体制の部分も重要になる。BIMはそれを実現するための有効な手段と考えている。足場モデルが確立すれば仮設計画立案から積算、見積もり、数出し、搬入、配車、安全点検、引取りまでを一元管理できる。当社はBIMを活用した一貫システムの構築を目指していく。
 三宅 当初は足場数量の数出しをお手伝いするツールとしてBIMの提供を重視してきた。BIMを作成しない現場での数出しの作業は手拾いしている。足場モデルを使えば、対象範囲の数出しがワンクリックで完了する。この手拾いの作業には1工区単位で1、2時間はかかっていたと聞くため、現場の負担は大幅に軽減できる。
 杉山 BIMを使って相互にとってメリットとなる一元管理の流れを構築している。そこを到達点とすれば、われわれはまだ山の2合目当たりを登っている状況。数出しだけでなく機材搬入や安全面も含めて最適化することは、当社特有の貢献になるはずだ。
 三宅 1年ほど前から施工段階で活用したいとのニーズが目立ち始め、足場モデル自体も改善を加えている。年間の導入実績は100件弱で推移しているが、作成するモデルは現場のニーズに合わせて年々変化している。とび職が実際に足場をどう組んでいくかをヒアリングしながら、実際の組み方も考慮してモデルを作るようにしている。現場でモデルを有効活用してもらうため、足場BIMマネージャーを配置する試みも始めた。施工段階での足場のBIM活用に取り組む現場は作図依頼を頂く全現場の1割以下とまだ少なく、解決しなければならない課題は多い。
 杉山 施工のリアルとBIMのつなぎ目を埋める部分には高いハードルがある。とび職の作業は現場合わせが頻繁にあるだけに、そうした経験値をどこまでモデルに反映できるか、われわれは現場で使える足場モデルを追求していく。
 三宅 現場の検討会ではVRを使った提案も始めた。見える化は事前に作業時の課題を発見しやすく、その気づきによって現場合わせの手戻りも減らしていける。安全面を考慮し、モデルでは色分けで重要部材が認識できるように工夫している。
 杉山 あるタワーの改修では点群で現況を把握し、そこに足場モデルを組み合わせた実績もある。このように大型建築の改修時には複雑な場所にどう足場を組むかという課題があり、点群の現況にモデルを組み合わせることで正確な足場計画が実現できる。新築の大規模プロジェクトも同様で、足場モデルを求められるケースは増えている。

現場検討会ではVRを使った提案も始めた

--応用技術はどう見ているか

応用技術 船橋俊郎氏

 野間口 数多くの企業のBIMコンサルを進めている中で、SUGIKOは先駆的に動いている企業の1つだ。安全性、生産性の実現にBIMをどう活用するか具体的に見据えているからこそ、本質的な課題が出てきている。何より重要なのは目的をきちんと見定めることである。当社はそのためのコンサルティングも提供しており、BIMのあり方を一緒に考えていくパートナー、プロジェクト関係者同士をつなぐハブとしての役割を担っていきたい。
 船橋 建設プロジェクト関係者は多岐にわたり、BIMを軸に全体をどうつなげていくか、それが当社の役割である。プロジェクトメンバーの全員がメリットを感じることができるBIMの枠組みを整えていく。当社はBooT・oneやConnecT・oneなどのBIM支援ツールを有効に活用し、関係者をつなぐ役割を担えればと考えている。建設業界でBIMを推進している人たちからは非競争領域の重要性を説く流れが広がっている。建設プロジェクトを成功に導き、関係者全員がメリットを得るためには、業界や業種で統一基準や枠組みをシェアすることが必要。仮設計画の部分でも非競争領域の議論が欠かせないだろう。




応用技術 木村征爾氏

 木村 toBIMを旗印に建設業界のBIM推進に力を注いでいる当社では『ConnecT・one QS』というノンBIMユーザー向けクラウドサービスを運用している。Revitがなくてもモデルを確認できる場であり、BooT・oneで作成した足場モデルであれば、iPADのような情報端末から簡単に数量を把握できる機能などを用意している。杉孝にはプロトタイプを検証してもらっているところだ。
--BIMの付加価値や導入効果は
 三宅 現場の変化に対応できる足場BIMであれば、活用の幅は大きく広がる。施工段階での活用を突き詰める中で抽出された課題を一つひとつ整理しながら最適な足場モデルを確立していく。そのためには「早く」「手軽に」足場BIMモデルが作成できることが必要。応用技術にも協力してもらいながらツール開発や、業務プロセスの再構築を視野に取り組んでいきたい。




 

  

応用技術 野間口龍亮氏

 杉山 足場BIMによって複雑な仮設計画の見える化が実現できることは、施工現場の安全性と効率性の向上に大きなメリットであり、それが評価されて、次の仕事につながっていくケースもある。当社が足場BIMに取り組んでいることを知り、仕事を依頼されるケースも少なくない。まさに本設以外でもBIMが注目されているということ。現場の期待に応えられるように、これからも可能性を追求していきたい。



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