【BIM未来図】設備BIMの行方(上) 皆が対話できる作業環境づくりへ/構造化データを軸に協業 | 建設通信新聞Digital

9月24日 水曜日

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【BIM未来図】設備BIMの行方(上) 皆が対話できる作業環境づくりへ/構造化データを軸に協業

オートデスクが6月に開いた設備工事会社向けの会合「MEPラウンドテーブル」は、広がり始めた日本の設備BIMが進むべき方向性が浮き彫りになった。BIMを出発点にDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略にかじを切る動きが広がる中、先導する企業はどこに向かい、どのような課題を乗り越えようとしているか。ラウンドテーブルを通し、設備工事会社が新たなステージに踏み込むためのポイントを探った。

日本の一歩先を進むように欧米のMEP(機械・電気・配管)業界は、BIMデータを活用した工業化の流れが着実に進展している。米国オートデスクで設備業界・戦略担当シニアマネージャーを務めるスティーブ・バトラー氏は「プロジェクト関係者が垣根を越えてコラボレーションできる基盤構築がポイントになる」と強調する。同社の調査によると、全体の8割は成長戦略としてデジタルツールの活用が不可欠と位置付けている。その多くがBIMを中核の機能に据え、蓄積したデータを各事業に利活用する戦略図を描いている。

CDEを構築しACC上で関係者が密に連携


その最前線にはCDE(共通データ環境)を構築し、プラットフォーム上でプロジェクト関係者が密接に連携し合う姿がある。北米を拠点にグローバル展開している建設会社のターナーはBIMのフル活用で生産性向上を追求しており、工期を3割削減した。スウェーデンに本社を置く建設会社のスカンスカはプレハブ化の促進で生産性を大幅に向上している。両社ともオートデスクの建設クラウドプラットフォーム『Autodesk Construction Cloud(ACC)』を基盤にCDEを構築し、施主を含むプロジェクト関係者がリアルタイムに情報を共有する枠組みを確立している。

バトラー氏は「プロジェクト関係者がBIMに精通していることよりも、皆が同じ作業環境で対話できることがもっとも大切」と説明する。これはBIMモデルの中にあるデータを一元化し共有することが重要であることを指し示している。モデルベースでは情報共有に制約が出てきてしまい、AI(人工知能)と組み合わせる上でも効果が薄い。蓄積データは「構造化された質の高いものでなければいけない」と付け加える。

オートデスクではファイルの中にあるデータを「粒状データ」と表現しており、それによってクラウド上で共通データとして関係者が利活用できるようになる。構造化されたデータを軸にプロジェクト関係者がリアルタイムに協業することが、コストや工期の削減につながる糸口となる。まさにBIM活用で重要になるのは、構造化されたデータをクラウド基盤上で一元化し、それをAIにも拡張していく流れだ。

海外の先行事例は、BIMの導入を出発点に生産プロセスやワークフローを見直し、蓄積したデータを各事業で有効に活用している。その先にはDX戦略につながる道筋がある。オートデスク技術営業本部建築ソリューション部建築ソリューションリーダーの橘田憲人氏が「3年ほど前から日本の設備工事会社もBIMを中心に置き、業務フローの再構築にかじを切る動きが広がってきた」と説明するように、日本の設備BIMは新たなステージに踏み込もうと動き出した。

MEPラウンドテーブルでは、先陣を切ってBIM活用にかじを切った高砂熱学工業や新菱冷熱工業などの取り組みが紹介された。そこにはBIMのデータ活用に向けて乗り越えるべき「課題」も見え隠れしている。

欧米では工期を3割削減したケースも



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