【首都高の高速1号羽田線】ステンレスライニングや恒久足場、100年先を見据え導入 | 建設通信新聞Digital

10月24日 金曜日

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【首都高の高速1号羽田線】ステンレスライニングや恒久足場、100年先を見据え導入

29日から下り線として通行できる新しい道路


 首都高速道路会社は22日、「首都高リニューアルプロジェクト」の第1弾として進める高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新事業の現場見学会を開催した。2016年の工事着手から約10年の歳月を経て「更新下り線」が完成し、29日午前1時に交通を新ルートに切り替える。約1.9㎞にわたる同区間は、海水の影響を強く受ける過酷な腐食環境に対応するため、橋脚に「ステンレスライニング」を施したほか、首都高管内では初となる1.3㎞の長スパンでの「恒久足場」を設置。100年先の安心・安全を見据えた耐久性・維持管理性の向上が図られている。また、当時国内初だったECI(技術提案評価・価格交渉)方式により、プレキャスト化を多用した施工者のノウハウを設計段階から反映させ、工期短縮と高品質な構造物の構築を両立させた。 実施設計と施工は、大林組・清水建設・三井住友建設・東亜建設工業・青木あすなろ建設・川田工業・東京鉄骨橋梁・エム・エムブリッジ・宮地エンジニアリングJVが担当している。

 同事業は、1963年の開通から50年以上が経過し、塩害によるコンクリートはく離や鉄筋腐食などの損傷が著しい区間をつくり替える。首都高更新・建設局の石田高啓事業推進部長(東京地区)は、工事で苦労した点として「地盤条件が思ったよりも悪く、設計のやり直しなども発生した」ことや、海とマンション、モノレールに挟まれた「『うなぎの寝床』のように細長いヤードでの騒音・振動対策や時間的制約」を挙げる。

 こうした難条件の中、国内初のECI方式が採用され、施工者には工期短縮と耐久性・維持管理性の二つが求められた。工期短縮については、迂回(うかい)路の構造(鋼管杭、ピアキャップ、床版、高欄)をプレキャスト化して現場作業を簡略化する提案がなされた。また、鮫洲埋立区間では、従来の盛り土構造から「プレキャストセグメント(ボックスカルバート)」に置き換える技術提案が採用された。石田氏は「結果的に早く高品質なものを構築できた」と振り返る。

橋脚に施されたステンレスライニング


 耐久性向上の一つとしてステンレスライニング工法を採用。海水に浸かる「水中部」と潮の満ち引きで乾湿を繰り返す「飛沫部」に対し、厚さ1.2mmのステンレス鋼板を巻き立てた。担当者は「ステンレスで覆った部分は塗装の塗り替えが不要、つまりメンテナンスフリーになる」と説明。明確な試算こそないものの、将来的な維持管理コストの削減に大きく寄与することが見込まれる。ステンレスで覆わない上部についても、金属溶射と重防食塗装を施し、長期耐久性を確保した。

概念図


 維持管理性向上の核となるのが、東品川桟橋部の高架下約1.3㎞にわたり「線」で全面的に設置された「恒久足場」だ。首都高管内ではこれまで足場の仮設が困難な交差点部など「点」での設置が主だったが、今回は海上でアクセスしにくいという理由から長区間にわたり採用された。足場の目的は、点検員がいつでも構造物をすぐに確認できる「点検の容易化」と、補修時に足場を組む数カ月の工期を不要にする「メンテナンスの迅速化」にある。内部は高さ1.8m以上確保され、従来の仮設足場に比べ格段に作業性が高い。部材は外側をステンレス、内側をガルバリウムで挟んだサンドイッチ構造で、構造物本体を塩水から守る「塩害対策」の機能も併せ持つ。

 リニューアルプロジェクトの第1弾で得られた知見について、石田氏は「現場作業を省力化し、簡易な構造で早くつくるノウハウは、今後のプロジェクトに生かせる」とし、1.3㎞にわたる恒久足場が「将来の維持管理性にどれだけ寄与するのか注目していきたい」と話している。

 

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