【フランク・ロイド・ライト】浮世絵から影響受けた? 生誕150年記念で日本との関係性探る議論 | 建設通信新聞Digital

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【フランク・ロイド・ライト】浮世絵から影響受けた? 生誕150年記念で日本との関係性探る議論

 フランク・ロイド・ライト生誕150年記念事業委員会(堀静夫委員長)による「BOX PROJECT 2017」の一環として、ライト作品である東京都豊島区の自由学園明日館で記念祝典が開かれた=写真。「ライト建築と日本」をテーマに、パネルディスカッションでは宇都宮美術館主任学芸員の橋本優子氏がコーディネーターを務め、建築家の隈研吾氏、編集工学研究所所長の松岡正剛氏、兵庫県立大環境人間学科の水上優准教授がライトと日本の関係性について活発に意見を交わした。
 隈氏はライトの手法について「空間的なレイヤーを重ねて奥行きを生み出すことや、自然と人工物の対比がなく混然一体としていること」などを挙げ、歌川広重の浮世絵から受けた影響を指摘。自身もそうした手法を意識しながら設計を手掛けたという栃木県那珂川町の馬頭広重美術館を紹介し、「建物のレイヤーを抜けて人工的な世界から奥にある山に行くような配置としており、私もライト建築から大きな影響を受けている」と振り返った。
 松岡氏は、「ライトが日本に残したものと、日本がライトにもたらしたものをどのような視点で見るかが重要」と提起し、日本に仏教や儒教が伝わった際にそれをアレンジして日本化してきた「エディティングフィルター」の観点から、「日本とライトについて再び振り返る必要がある」と強調した。その上で、「ライトの建築はすべての機能を生かしており、エディティングフィルターの存在を理解している。 日本がもたらしたライトと、ライトがもたらした日本は食い違っていない」と評価した。
 また、ライトの著書から、その建築思想を研究する水上氏は「帝国ホテルは1つの全体として首尾一貫したスタイルを持っており、諸様式には全く依存していない。試されているのは想像力であり、思い出ではない」というライトの言葉から「過去や現在の日本に見られる外見的な様式の引用が否定され、建築家の心の関与や歴史と風土への配慮、建物そのものの固有の独自性などが肯定的にとらえられている」と指摘した。
 式典では、「ライト建築:“間”と動態空間」と題したケンブリッジ大学のジョン・F・サージャント名誉教授の基調講演も行われた。

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